8/01/2007

AR Navigator 2007 No.19 佐野先生のミニ・レクチャー(10)

佐野先生のミニ・レクチャー(10)

「また、また、長のご無沙汰になりました」

後期になったら、一向にミニ・レクチャーが届かない、どうしたのだろうと不
思議に思った方もおられたと思います。私が講演や原稿整理に追われていたこと
もありますが、月曜は休日とか学園祭で分断されてまとまった講義ができなく、
思うように計画が進まなかったというのが第一の理由です。ようやく久しぶりに
昨日講義があったので、その様子をお知らせして、後期に私がやろうとしている
ことを知らせたいと思います。

まず、再度、後期の講義の全体目標と評価の方法について徹底を図りました。
後期の講義の最終到達目標は、200 語程度のまとまりのある英文を、教師から質
問の形で与えられるヒントなしに書くことができ、そこでのglobal errors は1
ヶ以下に押さえることと、自学自習の姿勢を伸ばすということでした。その具体
的な方法としては、教師が与えたテーマについて、自分の考えをまず自由に
mappingの形で書き出し、そのそれぞれについてできるだけ沢山の単文(ないし
短文)を書かせる。次ぎに単文を読んで、それぞれの結びつきの強いところを関
連づけてparagraph の下書きをする。さらにparagraph の関連を、introduction ,
body, conclusion に分類して、全体の下書きを初稿として書かせ、次ぎに英文
の正確さをcheck させてsecond draft にして、それをさらにつなぎ言葉などを
用いて完成版の3rd draft にするというものです。実際のところ、このクラスの
学生には、少し欲張りすぎた目標なのですが、その分、進度を緩めて、学期に4
つ程度のまとまりのある英文が完成すればよいと考えています。

そうなると、それぞれのdraft で何を個々の学生が考え、どう改善していった
かが見えなければなりません。そこで前期のように、2時間ごとに作品を紙に書
いて提出させて、それを私が添削して帰すという方法では心の動きが見えません。
また、添削をして返却しても、それが次ぎの作文に生かされて正確さが増したと
いう実感はなかったように思います。ですから、後期には自分が何を表現したい
か次第に堀さげる形にしたい、また、いつもどのような誤りを犯すのかに注意を
向けて、それを振り返る形にしたいと思ったのです。もちろん、学生に任せきり
では、自分の考えの深まりや誤りに気づくことはないので、2nd draft ができた
あたりで一度、英文のチェックを私がしてやることをしなければなりませんが、
基本的には学生が自分の作品を何度も見直し、版を重ねて書き直しをすることが
大切だと思ったのです。ですから、学生には、「毎時間日付を書いて、時間内に
自分がした作業や作品だけでなく、英文の訂正や家庭でした勉強を含めて、ノー
トに書き出してゆくように。また、それに関連して、そこで自分や友達や英文に
ついて感じたことや知ったことをできるだけ細かく書き出しておいて、教師がそ
れを見たときに、どんな勉強をし、何を考えたか、結局、どんな成長をとげたか
が分かるように記載しておくこと。後期の成績の6割は、ポートフォリオの形で
書かれたこのノートで評価する」と伝えてあります。

ただ、ポートフォリオだけでは英文の正確さは増すことは期待できません。当然、
文法の練習も大切です。だが、実際問題として、学生の能力差がかなり大きく、
それぞれが勉強を必要とする文法項目にも相違があります。ですから、一つは
mapping のモデルを教師が示す中で、必要な表現を文型の形で与えて口頭での練
習をさせると同時に、それぞれが自分の弱点と思った点を、教科書の文法問題を
やることによって見直すことができるように、その回答はすべてコピーして配布
してあります。実際は、進んで文法の勉強をする学生は多くはないと思うので、
教師が点検する折に、「関係代名詞の箇所の復習が必要」というような注をつけ
てやって、その部分を自分でノートに調べて書くという活動になると考えていま
す。また、学生によっては、「教科書レベルは沢山だ」と考えているものもいる
ので、そうした者は、必ずしも教科書でなくとも、自分の弱い部分を補強する勉
強を自主的に実施していることが分かるような記述をすればよい。それも嫌なも
のは、英語検定などの外部テストで実力を証明すれば、それでもよしと告げてあ
ります。逆に、英語が苦手なものは、期末テストで長い英文を書くことはできな
いだろうから、日常のノート作りと振り返りをきちんとしておくことが単位の修
得には必要だと注意しています。

これまでのところ、mapping の方法を知らせ、portfolio の作り方を教えること
にかなりの時間がかかり、テーマもMy future plan を扱ったばかりです。これ
も細切れの時間で内容的な定着がいまいちの様子だったので、昨日は2つ目の
Health というテーマで、教師が英文を話しながら、mapping のmodel を示し、
それにならって学生たちはそれぞれにmapping を作成しました。それができない
学生には、教師のmodel から興味のある部分を選んで、自分なりのmapping を作
成させました。次ぎに、それぞれの項目でできるだけ沢山の単文を書いて、合計
でも200 語になるように書くように指示しましたが、途中で時間切れとなったの
で、残りは宿題としています。また、一方で、教科書の本文のHealth and
sports に関連する文章を音読させました。英文が難しく、学生には抵抗がある
のですが、一つは音声面の練習も必要だし、かつ、テーマに関連する語句も出て
くるので、その中で興味を持った表現を覚えて欲しいと願ってのことです。また、
できれば自分の書いた作文を音読して発表させたいので、期末テストには、音読
も入れると告げてあります。デベートの形までもってゆければ最高なのですが。

このような状態ですから、現在のところこの方式がうまく行く保証はありません。
このテーマが終了したら、学生にアンケートをとって、その結果からまた、軌道
修正をするかもしれません。だが、結果はどうあれ、常に上を目指してチャレン
ジ精神を学生にも、自分にも求めてゆきたいものです。というわけで、今日のと
ころは、後期の授業がようやく動き始めたという報告です。


 ※昨年度のミニレクチャーを再送しています。