12/31/2007

メンタリングに注目

英語教員の全員研修にアクションリサーチを導入してから1年が経過したころだったでしょうか。自分自身の所属校で小規模な実践研究を、自らテーマを設定して長期的に行うという、あまりこれまで試みられてこなかった研修方法に手応えを感じ始めていました。それと同時に、基本的にたった一人で行う自己研修では、どうしても限界があることにも気づき初めていたのです。やはり、自分一人での振り返り(reflection)では、越えられない線があるのではないかと。授業の課題や問題点が分かっても、そして、それを自らの省察で乗り切ろうとしても、超えがたいハードルがあることを。課題の解決には、「伴奏者」がいるのではないかと。

 そこで、出会ったのが「メンタリング」という考え方でした。民間企業などで関心が高まり初めていた「コーチング」と同義だと言う人もいます。教育場面ではメンタリングと呼ぶことが多いようです。少し資料をあさってみたり、調べてみました。実際に、コーチング実践会の杉本良明さんをお呼びしてコーチングのワークショップを実施したのも、そのころでした。この研修に関わっていた指導主事がコーチングの手法を学びました。以後、受講者の皆さんのリサーチをサポートするために「メンタリング」を行うようにしたのでした。

 「メンター(mentor)」とは、メンティー(mentee)が、抱えた問題や課題を見出し、それを解決するために、ともに学び、ともに探求するものとして関わっていく者のことです。具体的には、「メンターが、質問型のコミュニケーションを使い、相手に取るべき行動を自ら選択してもらう」という行為がメンタリングであると言われます。何かを指示したり、指導・助言するのではなく、本人自らが課題を解決できるように導いてあげるという役割を担うのがメンターです。メンターという名称は、ギリシャ神話で、トロイ戦争に出陣するオデッセウスが我が子の教育を託した名教師の名に由来するそうです。

 しかし、今回の5年間の研修においては、メンタリングは十分に機能しませんでした。メンター一人の抱えるメンティーの数の多さ、電子メールでのオンラインサポートが中心でうまく深い人間関係を築けなかった、お互いに多忙な中で時間をみつけて本格的にメンタリングを行うことができなかったなど、課題が数多くありました。

 とは言え、今回実際に試みてみたことで、メンタリングのもつ力も実感できました。特に、教員の自己成長をうながすツールとして、大きな可能性を秘めていると思います。今後、メンタリングという考え方は、学校において不可欠なものになるだろうと思っています。このことに気づいている人はまだあまり多くないのですが。。。

12/30/2007

People are not persuaded by what you say, but by what they understand.

- Speeches by Management, Advanced Communication Series, Toastmaster International.

理解して、納得してくれたことでしか人は動かない。至極当たり前のことなのについ見過ごしてしまう事実。このフレーズに続いて、"To determine what motivates others, you have to see the world through their eyes and understand their point of view."とあります。人間同士のコミュニケーションの核心ですね。

12/29/2007

There are no diffucult students--just students who don't want to do it your way.

-Jane Revell & Susan Norman

"the strategy paid off"

Okajima, playing a rigorous Major League schedule for the first time, did become fatigued in September. But the Red Sox shut him down for a couple of weeks and the strategy paid off.

(Red Sox Official Webpageより)

岡島選手はメジャーの厳しい日程で後半少し疲れを見せて心配されていました。一つ目にとまったのは、なぜfatigued という言葉を使ったのか?なぜ、tiredじゃなかったかということでした。fatiguedをオンライン辞書でみると'extremely tired'と定義され、=exhaustedとなっていました。tiredとexhaustedの違いは比較的わかりやすいですね。念のため辞書(Longman Activator)でみると exhausted=extremely tired ,especially after a long period of hard work, exercise, walking or running etc has used up all your energyとなっています。used up all your energyの部分が意味を決定づけていますね。さて、fatigued。これは、形容詞としてのエントリーはなく、名詞 fatigueだけ掲載されていて、'a word used especially in medical contexts, meaning a state of extreme tiredness or weakness'とあります。例文として、"Long hours spent in front of a computer screen causes fatigue of the eye muscles."があります。岡島選手の場合も、疲労の度合いはチームドクターあたりが判断して、戦略的に休ませた、というニュアンスがあるので、fatigueを使ったのかもしれません。それが、文末の the strategy paid offにつながっているのでしょう。pay off というのは、この場合、My perseverance is paying off. / Your studies have paid off.のように使って「報われた」 という意味で使われるようですが、strategyとcollocateさせているところがおもしろかったので紹介しました。

12/28/2007

Teacher Portfolioの意義


 高知県の英語教員指導力向上研修(主催 高知県教育センター、H15~19実施)の一つの柱はアクション・リサーチに実施でした。受講者は、県内の全中高教員約420名。全員が年間を通しての、所属校での実践研究に取り組みました。

 このアクション・リサーチで重要な役割を果たしたのが、Teacher Portfolioです(写真)。Teacher Portfolioとは、「ある一定期間行った教授活動に関するあらゆるものを,参加する教師自らが積極的に保管・整理することによって,教師としての自己成長の過程と結果を記録するシステム」(参照 横溝紳一郎(1999)「アクション・リサーチとティーチング・ポートフォリオ:現職教師の自己成長のために」The Language Teacher 23:12)のことで、受講者は1年間の取り組みをすべてA4版のこのファイルに綴じ込んでいきます。

綴じ込んでいくものとして、


 ①自分自身の教育哲学(教育に関する考え方)をまとめたもの
 ②担当する授業・講座の詳しい説明(授業の内容、教科書、補助教材、授業形態など)
 ③年間指導計画やシラバス

 ④学習指導案(公開授業等で配布したものなど)
 ⑤授業を録画したもの

 ⑥授業に関する観察や反省の記録やメモ
 ⑦使用した教材
 ⑧授業観察者の評価、コメント
 ⑨生徒による授業評価、授業評価システムの結果

 ⑩生徒の作品


などを例示しています。右の写真は、ポートフォリオに綴じ込まれた授業の様子を記録したフィールドノートです。

このような「教師ポートフォリオ」を作成する意義は、主に次の3つがあると考えています。

(1)より深く、継続的な内省が可能になる。
(2)自己成長の喜びを実感できる。
(3)説明責任の証拠となる。

 私たちがやってきた授業研究は、多くの場合、1時間のみの授業公開や研究授業に過ぎませんでした。その中で、同僚や指導主事の助言をもらい授業の課題を探ってきたのです。しかし、私たちはそのような方法に限界があることに気づき始めていました。授業の本質的な改善には「複雑な要因をまるごととらえ、かつ長期的な新しい研究方法」(佐野,2000)が必要であるということに。

 教員の力量形成のツールとして teacher portfolio を活用することは、まだあまり広く認知されていませんし、具体的なノウハウも確立されていません。しかし、やはり授業のように、複雑な要因がからみあったものを読み解いていくには、このような質的な分析が不可欠だと考えています。teacher portfolioの活用の普及もふくめて、その可能性を探っていくつもりです。


You can't direct the wind but you can adjust the sails.

-Anonymous

AR Navigator 2007 No.32 Mission Completed

皆様へ

昨日は、報告会お疲れ様でした。

工夫された実践、工夫された発表がたくさんあって、とても良い会になったと思います。いろいろな実践のアイデアがあり勉強になりました。やっぱり、授業について話をする時の表情はみなさんとても、生き生きとしていると思いました。佐野先生からも、「皆さんの熱心なリサーチの様子に感動しました。」とのメッセージをいただいています。

今後も、ぜひ引き続き、授業を見つめ、生徒を見つめる reflective
practitionerであり続けてください。今回、思うような結果がでなかった先生も今回のリサーチで身につけた方法や考え方を生かしていただければ幸いです。

まだ、報告書の仕上げがありますが、ひとまず、お疲れさまでした。

それでは、良いお年を。

「失敗は終わりではない。それを追求していくことによって、はじめて失敗に価値が出てくる。失敗は諦めたときに失敗になるのだ。」土光 敏夫

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☆英語教員指導力向上研修メーリングリスト
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"a dominant 1-2 punch"

Sure, the Red Sox thought he could help out a little in the bullpen,
but nobody forecasted that he would be an All-Star, or that he'd be
part of a dominant 1-2 punch with Papelbon.

注)he=岡島投手
(Red Sox のOfficial web pageから)

「へー」という感じ。「人生はワンツーパンチ」という歌の歌詞がありますが、なるほどこんなふうに使うのかと。。。おもしろいですね。「ちょっぴりは活躍するだろうと思ったけど、まさかね」っていう感じがよくでている文です。1-2 punchは辞書には「左右の連続パンチ」と訳されていますが、"a dominant 1-2 punch with Paplebon"というフレーズに、岡島投手が重要な役割を果たしたという作者の評価がよく表れている気がします。

12/27/2007

ポスターセッションを使った実践研究発表-アクションリサーチの報告会から


  教員の力量を高める方法として、アクション・リサーチは大きな可能性を秘めています。高知県では、5年前に始まった英語教員の全員研修(詳細はこちら)でアクション・リサーチを導入、今年で県内の中高の英語教員全員の受講が終了しました。これで、アクション・リサーチは高知県の英語教員にとって「共通言語」になったと言えます。

 受講者は、1年間それぞれの職場で、テーマを決めて小規模な実践研究を行います(これがアクション・リサーチ)。年末の研究成果の報告会はポスターセッションで行います(2007.12.26、会場サンピア高知、高知県教育センター主催)。広い部屋に、机を配置し、発表者はアクション・リサーチの経過を蓄積したポートフォリオや授業で使った教材、プリントなどを展示。授業の様子をビデオにとってきて上映したり、生徒の音読のテープ録音を流している発表者もいます。様々な工夫とアイデアがちりばめられたポスターセッションになりました。会場のあちこちで、熱心に説明する声、楽しそうに談笑する声が聞こえます。真剣にメモをとる人もいます。デジカメで記録する人もいました。明らかに、通常の研究発表会とは異なった光景です。会場を満たす雰囲気は、とても和やかで、楽しげです。このような環境の中でこそ、同僚性も育つのではないかなあ。


ポスターセッションを選んだ理由はいくつかありますが、参加者全員が主体者にれるという点が最大のポイントです。当日は、発表者を交代して3ラウンド(各ラウンド約30分)で行いますが、全員が必ず発表者にもなり、オーディエンスにもなります。そして、オーディエンスの時も、決して「聞き役」ではありません。発表者との活発なインタラクションがあります。ポスターセッションでは「参加者のルール」を定めてあって、オーディエンスも重要な役割を担うことが期待されているのです。全員が必ず貢献できる役割があり、全員が発表もし、質問もします。大きな達成感が得られる発表形式です。

参加者同志が実践研究を共有することで、共に学びあえる。これがポスターセッションの魅力です。生徒の発表会や校内研修でも、もっともっと活用してほしい手法です。

"pleasantly surprising"

Of all the stories that developed on the 2007 Red Sox, Okajima's was
probably the most pleasantly surprising.

(Boston Red Sox Official webpageより)

Red Sox 岡島選手の活躍はうれしかったですね。本人もあくまで松坂君が主役だということで控えめだったし、あれほどの大活躍を期待した人はいなかったかもしれません。そのようなよろこびの気持ちが、まさに pleasantly surprising でしょうね。わかりやすい表現です。

12/25/2007

"In the world there are only two tragedies. One is not getting what one wants, and the other is getting it."
- Oscar Wilde (1854 - 1900), Lady Windermere's Fan, 1892, Act III

12/24/2007

『和訳先渡し授業の試み』



『和訳先渡し授業の試み』が世に出てから3年以上が経ちました。版も第3刷までいったようで、今でも少しずつは読まれているようです。

 本書が出てから、全国あちらこちらで、「訳読をはしょる」という実践がみられるようになりました。何と、ある県の教員採用試験でもテーマとして取り上げられたとのこと。しかし、まだまだ賛否両論あり、誤解ありです。そんなことで、和訳先渡し授業のそもそもの発想やその後見えてきたことなど、少しずつ残していきたいと考えています。

ちなみに、この研究には、TIF Projectという名前がつけられています。TIF Projectとは"Translation in First"の略。和訳先渡し授業の提案を通じて、高校英語教育を変えていこうとする試みです。この名称は、全英連高知大会(山田授業)で使用したテキストにあった紅茶の飲み方"Milk in First"からとったものです。

12/09/2007

AR Navigator 2007 No.31 佐野先生のミニ・ゼミナール(5)AR報告会

佐野先生のミニ・ゼミナール(5)

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 Q: アクション・リサーチの報告会がありますが、これまで研究会や学会で発表したこともないので、どのような準備をすればよいかわからず、困っています。
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 アクション・リサーチの発表は、通常の英語教育の学会発表とは異なる特徴があります。学会での発表は、いろいろな意見の人を相手に、自説の正当性を納得させるために話すのですから、証拠を挙げて説得に努めます。いわば、自分の論文を聞き手が納得するように売る必要があります。食事にたとえれば、シエフが腕を振るった料理で勝負するレストランの食事というところでしょうか。それに対して、アクション・リサーチの発表、特に、今回のように授業改善を目指したリサーチの発表は、いわば仲間内で家庭料理を紹介するようなものです。各家庭にはそれぞれ事情があり、その事情の中で精一杯努力して作った料理を紹介するのですから、「食材が悪い」とか「調味料の使い方が問題だ」などと批判するのはルール違反です。それぞれの料理の特徴を賞味した上で、レシピーを紹介しあい、工夫を出し合うのがアクション・リサーチの発表だといえるでしょう。

これは料理のレベルの上下の問題ではありません。質の違いです。一人の教師が自分の置かれたユニークな状況の中で実践したことや、その結果や解釈の報告に対して、それを共有していない者に批判したり軽蔑したりする資格はないからです。聞き手にできることは、まず、報告を受け入れ、その上で状況が似ているなら、自分の工夫に言及して参考にしてもらうことでしょう。ですから実践報告する側で、「こんなことを話したら、批判されるのではないか」とか「レベルが低いと笑われるのではないか」という不安を持つ必要はありません。誰も、家庭の料理を批判する資格はないのですから。

ただ、逆に言うと、家庭料理を紹介するときには、自慢の料理のレシピーを知りたいと思うのは当然でしょう。「食材が悪い上に、調味料の加減を間違いたいので、失敗作になりました」などと言われると招かれた客はがっかりです。もちろん、立派な食材をそろえることができなくて、欲しい調味料もない場合はどの家庭でもあるでしょう。それでも、そうした状態の中で、どんな工夫をしてこの味を出したのか、その工夫が聞きたくて集まっているのです。ですから、「生徒がやる気がなくて失敗しました」だとか、「忙しくてできませんでした」などと平気で言う人が居たとしたら、その人の誠実さを疑いたくなります。こんなことは「根性なしの、恥知らず」が言う言葉です。

もちろん、料理が失敗することはあります。それは食材が良くても悪くても起こることでしょう。失敗したと自分が思う場合には、その失敗の原因がどこにあるのか、どうしたら防げるのか、次にやるとしたらどこを変えてやるかを詳しく説明して欲しいものです。そういう失敗談は、ちょうどご飯のおこげのように、それはそれなりにおいしいものであり、それを味うことで得るものも多いのです。ですから、自分が予想した結果が出なかったとしても、落ち込む必要はありません。生徒や環境を逃げ口上にせずに(もちろん、特殊な事情があるなら、それを話してもらうことは理解を深める意味では必要ですが)、失敗を前向きに捕らえ、そこから学ぶことに焦点を当てて紹介して欲しいものです。アクション・リサーチの目標は、生徒の変容だけでなく、教師がこのリサーチを通して何を考え、感じ、その結果どのような変容を遂げたかを知ることにもあるのですから。

ここまで、発表する内容について話しましたが、発表の仕方にもアクション・リサーチは特徴があります。まず、第一人称で「私は・・・・」で話しを続けます。そのことによって、客観的な事実だけでなく、自分の問題意識、感想、実践、そこで考えたこと、苦労したことなどを一緒に話せるからです。ですから、肩肘を張らずに、くだけた仲間内の報告という形で発表を進めます。とはいえ、ハンドアウトだけでは、実践の様子がうまく伝わらないかも知れません。ビデオとか、写真とか、生徒の作品とか、生徒の感想文、また、使用したワークシートなど、できるだけ実物やそれに近いものを見せると、発表がいきいきとしてきます。生徒の声を録音したものでもよいでしょう。そうした小道具を用意すると発表が盛り上がります。

一方、聞く側も、仲間内の発表となるように、発表者を囲んで報告を聞きます。また、聞き終わったら、発表の中で自分の興味に合致した点を取り上げ、共通の基盤を確認したうえで、質問や意見を言うようにします。しかし、アクション・リサーチの発表では、どちらが正しいとか誤っているという判断をすることは控えます。というのは、それぞれの先生の状況は体験や考えかたによって、複数の回答があると考えるからです。アクション・リサーチをすることによって、先生は「教え方を学ぶ生徒」にもなるのですから、それぞれの実践から自分に参考になることを選んで聞くという姿勢が大切です。

当日は、私も一部だけになるかも知れませんが、発表を聞いて勉強させていただくつもりです。今から楽しみにしています。でも、先生方の本当の意味での実践研究は、この研修が終わってから始まるとも言えるでしょう。指導要領がじきに改定され、また、新たな挑戦を強いられることになります。そのときには、ぜひ忘れずに思い出して欲しいのです。高知には5年間のアクション・リサーチの体験が共有されているのだということを。それは大きな財産であり、力になると私は信じています。

それでは、皆さん。坂本竜馬の熱い心と夢をふところに、高知の英語教育を進めてください。期待しています。高知の英語教育に栄えあれ!

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12/03/2007

AR Navigator 2007 No.30 佐野先生のミニ・ゼミナール(4) リサーチの結果をどうみるか

佐野先生のミニ・ゼミナール(4)

お元気ですか。いよいよ残された時間が限られてきましたが、無事にリサーチは進んでいますか。今回は次のような質問が寄せられました。

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質問:生徒との関係があまりにも近いため、子どもたちのアンケートでは変化が読み取りにくかったり、教師を思って書かれたように受け取れる結果だったりしました。テストの点数データも用いましたが…それとは別に意識の変化を見たかったときにそういう難しさを感じていました。なんとか客観的な見方ができないか、と思っていました。
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佐野先生:「意識の変化を見たい」という点では、「ゼミナール(3)」で扱ったのと同じ問題です。ですから、そこと重なる部分は繰り返すことはしません。しかし、「生徒との関係があまりに近いために、アンケートでは変化が読み取りにくい」というのは、具体的にはどのような問題があるのでしょうか。少人数クラスで、筆跡なども先生が知っているので、正直には書けないと生徒が考えてしまうということでしょうか。また、「教師を思って書かれたと受け取れる結果」というのは、生徒が先生に対する遠慮から批判的なことは書こうとしない感想文が多いということでしょうか。よくは分かりませんが、少人数クラスだと教師も生徒も遠慮が働いて、ストレートにものが言えない雰囲気ができることはあるのかも知れません。ただ、この点は深入りすることはやめます。

この質問は、別の見方をすれば、レポートのまとめ方についての悩みのように見えます。すなわち、「良いリサーチは、成績などの数量的なデータも、アンケートなどの質的なデータでも、次第に改善してゆく形が客観的に見えるはずなのだが、自分のレポートでは、生徒の内面の変化がアンケートでは現れていない。それで良いのだろうか?」という不安があるように思います。確かに、この両面で改善の姿が見えるリサーチはかっこよく見えます。ただ、リサーチの狙いは論文としてのまとまりではなく、生徒の実態の改善であり、教師の振り返りから生まれた認識の深まりです。生徒の実態のなかには、アンケート結果も入りますが、生徒の感想文や教師の観察の結果から生まれた問題意識も入ります。

ですから、なんらかの理由でアンケート結果では実態が見えてこないのであれば、生徒に学期を振り返って感想文を書かせ、その中から共通するキーワードを選び、その点でプラスの評価をしている人数、マイナスの評価をしている人数を示し、代表的なコメントを選んで紹介するだけでも、クラスの姿は見えると思います。また、ここで出てきた結果を教師の立場から解釈し、結論づけると同時に、それが自分の今後についてどのような意義のあったリサーチであったか、今後、どのような改善の視点が必要かなども加えます。

具体例がないと分かりにくいかも知れません。たとえば、リサーチのテーマが「英語を積極的に話す生徒の育成」だとします。これを直接アンケートで「あなたは英語を積極的に話すようになりましたか」と質問しても、教師の期待している答えを先読みして回答するので、信頼性がないと教師の側で考えたとします。その場合は、「この学期の英語授業を振り返り、感想を自由に書いてください。自分でがんばったこと、嬉しかったこと、苦労したこと、自分で変化したと思ったことなどは必ず書くようにしてください」と伝えて、自由に書かせます。宿題にしてもよいかも知れません。その感想文を集め、「家庭学習をするようになった」「授業以外でも英語を聞くようになった」「辞書を引くようになった」「英語をはずかしがらずに話すようになった」などなど、生徒の感想文に書かれているコメントを箇条書きして出します。そのそれぞれについて、たとえば、「家庭学習をしなくなった」とコメントがあれば、最初の項目にはマイナスが一人というように集計してゆきます。もちろん、あまり数の多くない項目も出てくるでしょうが、プラスやマイナスを合わせてコメントの多い項目を集めて集計して、クラスの全体的な様子を解釈するのです。

ところが、感想文を書くことを嫌うクラスもあるでしょう。その場合は、人数の少ないことを幸いに、時間を見つけて個人面談することも考えられます。生徒だけでできる課題を用意し取り組ませると同時に、名簿順に一人ずつ別室に呼び出し面談するのです。あいまいな返事は切り込んで行って、普段は隠れている本音を聞きだすように質問を工夫します。しかし、あまり尋問風にならないように気をつかい、「先生に教えて欲しい」という姿勢で友好的に臨むと同時に、終了時には必ず協力を感謝します。こんな風にして引き出した言葉をもとに、先に説明した分類方法でクラスの全体的な方向を探ることができます。

レポートを形よくまとめることよりも、実際に授業が改善されたり、あるいは教師が問題の本質をより深く理解できたリサーチであれば、レポートの完成度は気にする必要はありません。学会で発表するとか、論文にまとめるとなると、妥当性だとか信頼性が大切で読者を納得させる資料を十分そろえる必要がありますが、授業改善が目的の場合は、形式よりも実利です。このリサーチをやることで、クラスや生徒がどのように変わってきたか、教師がどのような認識を得たか、などの視点は感想文でしか表現できません。実際に海外で行われているアクション・リサーチの論文には、感想文を集めたものが沢山あります。数量的なデータやアンケートの集計がなくとも、説得力のある感想文もりっぱな資料で、判断材料になるということなのです。

それでは、残りの時間も短くなっていますが、皆さんの熱意あふれる実践に触れることを楽しみにしています。高知県での悉皆研修の花であったアクション・リサーチが見事に根付いて、英語教育の研究がますます盛んになることを期待しています。最後に、高知の教師魂よ、永遠なれ!

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12/02/2007

The measure of a country's greatness should be based on how well it
cares for its most vulnerable populations.

-Mahatma Gandhi
「失敗は終わりではない。それを追求していくことによって、はじめて失敗に価値が出てくる。失敗は諦めたときに失敗になるのだ。」

-土光 敏夫

12/01/2007

AR Navigator 2007 No.29 Follow-up ミニゼミナール(3)

皆様へ

12月に入りました。時の流れは早いものです。

リサーチも終盤。これまでの進捗状況はどうでしょうか?成果の見えてきた人、まだあまり変化の感じられない人、いろいろいると思いますが、せっかく時間をかけて一つのことに取り組むのですから、ご自身で達成感を感じられるよう、ラストスパートをかけてください。

さて、佐野先生のミニゼミナール。佐野先生の「恋」の手ほどき(?)、楽しんでいただけたでしょうか。恋人どうしであれ、生徒と教師との間であれ、人の心理というものは、簡単に数値には表れないものです。

佐野先生は、このことについて、とても重要な指摘をしています。「ちょうど数量的な調査でも、「調査結果」に解釈を加えて「結論」を出すように、こうした質的調査でも、やはり内容を吟味し「解釈」することが必要なのです。」と。

データは、データに過ぎない。もちろん、データの客観性は大切ですが、数値だけでは何も意味をもちません。結局、それにどのような「意味を付与する」かに、かかってくるといえるのでしょう。データをできるだけ客観的にながめ、その中から、何を読み取り、どう自分自身に生かすか、そこにかかってくるのです。

授業というのは、教師、生徒、教材のインタラクションから成り立つ、非常に複雑なプロセスです。データは、それを読み解く「手がかり」に過ぎません。「手がかり」なしでは、教師側の独善に陥ってしまう危険性がありますから、大切な手がかりを、澄み切った目で見つめなおして、授業をよりよいものにしていきたいですね。

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11/25/2007

AR Navigator 2007 No.28 佐野先生のミニ・ゼミナール(3) 生徒の意識を測る

佐野先生のミニ・ゼミナール(3)                松山大学  佐野正之

 皆さん、お元気ですか。年末が近づくにつれ、いよいよ、皆さんも授業やらアクション・リサーチの成果を整理することに追われ、文字どうりの「師走」の毎日かと思います。今回は、次のような質問が寄せられています。

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質問:データをとるなかで、生徒の意識の変化が測りにくいことが課題になっています。
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佐野先生:これも答えにくい質問です。「生徒の意識」というのは、何に対する意識なのでしょうか?評価でいう「積極的なコミュニケーションの態度」なのでしょうか?だとすれば、文部科学省の「評価規準」にあるように、「積極的に言語活動をしているか」という視点と、「実際のコミュニケーションの場面で、なんとかコミュニケーションを続けようとしているか」という視点から、生徒一人一人について評価していくことになります。たとえば、英語を話すことに関する意識であれば、文型練習と重ねて意味のある言語活動をさせ、活動への取り組みの姿勢が「十分に満足がゆく(A)」、「満足である(B)」,「努力が必要(C)」に分類して行きます。また、実際のコミュニケーションの場面であれば、ALTとのインタビューで会話を継続しようとしているか否かで評価してゆきます。いずれにしても、適切な活動に取り組ませ、そこでの態度を評価してゆくことになると思います。

 しかし、この質問では「態度」という言葉を使わず、「意識の変化」を使っているところをみると、「英語学習の必要性の認識」ということなのでしょうか。生徒が英語学習をどの程度必要だと考えているか、その程度の変化を見たいということでしょうか?もっと狭い意味で、「文法の重要性の認識」という意味なのでしょうか。具体的にこの場合の「意識」は何を指すのかは不明ですが、「佐野先生のミニ・ゼミナール(1)
」で数量的なデータの扱いには触れているので、ここでは「数量化できない、生徒の内面の変化を知る方法としてはどのような方法があるか」と解釈して、たとえ話から解説を始めることにします。

 もし、あなたが、恋人の自分に対する「内面の変化」を知りたいとすれば、どうするでしょうか。多分、「私を今でも愛している?」と直接聞くことはせずに、一緒にいるときの様子や言葉を注意深く観察し、それを蓄積して判断材料にするでしょう。あるいは、こちらから働きかけ、たとえば、手料理をご馳走したり、マフラーを編んで送ったりしてそのときの相手の反応から判断します。また、さりげない話題について手紙やメールを交わすことで、相手の気持ちを聞きだそうともするでしょう。英語学習に関していえば、(1)
授業中の態度を観察する、(2) 音読テストやインタビュー・テスト、あるいは、スピーチや英作文で態度的な側面を評価する、(3)
こうした活動の後で、どこが大変だったか、どこが楽しかったか、などを質問し、その回答を分析することで全体の様子を知ろうとする、ということになるでしょう。この場合、「分析」などと言っても大げさなことではなく、教師の望む方向から見た場合に、生徒のコメントが「非常に肯定的」「どちらかというと肯定的」「どちらかというと否定的」「完全に否定的」のどれに入るかを分類し、その割合を見るのです。さしあたりは教師の抱く疑問に関連のない事柄は一時的に除けて考え、その後、必要に応じて、また、別の視点から分類します。これを時系列で繰り返せば、「内面の変化」は見えてくるはずです。

 ところで、上の「恋人」のたとえは、英語授業でのアクション・リサーチとはそぐわない点がひとつあります。どこでしょうか。日常的観察、活動の評価、コメントの分析など、いづれも英語授業のARに当てはまります。だが、非常に重要な点で、しかも、実際に先生方が勘違いする点で、大きな違いが両者にはあるのです。

 それは、本心を直接聞くことができないと考えていることです。確かに、恋人なら直接尋ねても正直には答えないでしょうし、答えてもあまり信頼度は高いとはいえません。しかし、もし、あなたが恋人ではなく、親友だとしたらどうでしょうか。親しさの度合いにもよるでしょうが、かなり本音に近い内容が聞けるはずです。だとすれば、生徒に対するときに、恋人のように考えるのではなく、生徒の友達としての立場から生徒の本音を聞く姿勢が大切だということになります。生徒の恋人役は英語であって、教師ではないのです。教師は友達として2人の仲を取り持つ立場なのです。それなのに、授業に対するアンケートを、まるで恋人からの返事のように読んでしまうので、嫌われてはいないかと恐ろしくなって直接聞くことができないのです。授業に関するアンケートをするなら、「先生のこれからの指導の参考にしたいので、自分の考え方がどんなふうに変わったか、アンケートに答えてください。また、感想も自由に書いてくれると、思わぬ発見があるので、できるだけ沢山書いてください。成績には全く関係がありません。」と依頼します。

 これには、教師の日ごろの生徒に接する態度が重要です。英語はしっかり勉強して欲しいけれど、君たちが成長してゆくことこそ一番大切だと思っていると伝え、生徒の信頼を獲得することが大切なのです。信頼されていれば、頼みに応じる生徒は沢山いるはずです。その意見を、整理してゆけば、生徒の内面も見えるはずです。ただ、注意点もあります。いくら友達でもふざけたり、わざと意地悪な意見をいう人も中にはいるものです。それにいちいち傷つくことのないように、心の準備が必要です。生徒のコメントを自分が批判されているわけではなく、英語学習についての意見や要望を書いているのだから、たとえ授業に批判的な意見でも、裏返せば自分への応援歌だと考えるようにします。ですから、ちょうど数量的な調査でも、「調査結果」に解釈を加えて「結論」を出すように、こうした質的調査でも、やはり内容を吟味し「解釈」することが必要なのです。

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11/24/2007

AR Navigator 2007 No.27 Follow-up ミニゼミナール(2)

皆様へ

佐野先生のミニゼミナール(2)では、仮説の設定についての悩みに答えていただきました。

仮説の設定は、とても悩ましい問題です。この研修の一年目から、受講者の皆さんの最大の悩みでした。自分がやろうとしていることが、正しいのかどうか。本当に、このままで効果があるのかどうか。不安を感じて当然だと思います。

もちろん、的確な仮説を立てて、理想的に授業が改善されていくことが、重要なのは言うまでもありません。妥協せず、より良きものを探究しましょう。我々はプロなのですから。

しかし、それにもまして重要なことがあるのです。佐野先生の言葉をかりると、「不安はあるが、自分のやってきたことと生徒の可能性を信じて、一喜一憂せずに前進しつづける教師を生徒は期待しているのです。」さらに、佐野先生はこうも述べています、「「現状の中で、この生徒の状態をすこしでも改善するために、私に何ができるだろうか?」と考えることからアクションリサーチは始まるのです。」と。

より優れた課題の分析、的確な仮説設定、力量あふれる実践、着実な検証、それらはすべて必要です。今後、ますます重要になるかもしれません。しかし、決してそれだけで「教師」という職業はできているわけではない。授業をとおして、生徒に伝わる「熱」のようなものが必要なのだと思います。

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☆英語教員指導力向上研修メーリングリスト
【授業改善プロジェクト担当】高等学校課 長崎政浩
PHONE 088-821-4907 FAX 088-821-4547
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11/18/2007

AR Navigator 2007 No.26 佐野先生のミニゼミナール(2) 仮説はこれでいいのかな?

佐野先生のミニゼミナール 第2回 ARの質問に答える(2)

  松山大学  佐野正之

 みなさん、こんにちは。「ARの質問に答える(1)
」は読んでいただけましたか。少しは役にたつ情報がありましたか。今回もまた、「うーん・・」と考え込むような質問です。

-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
質問:仮説はとても大切だと思います。私もずいぶんと考え、苦労して立てた仮説なのですが、実際にやってみると、これが本当によいのかどうか自信がもてません。どうしたらよいでしょうか。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

佐野先生:
 この質問の答えに悩んでしまう理由は、答えはあるようでないからです。理屈で言えば、仮説が良いか悪いかは、直面している問題の解決にどれだけ成功する可能性があるかで決まるわけですから、「上手く問題の解決に繋がる仮説であれば、それはよい仮説で、繋がらない仮説は駄目な仮説だ」ということになります。ですから、「仮説が良いかどうか」と悩んでいるよりも、実際に2週間程度は実践してみて、その後の生徒の様子を見て判断するのがひとつの方法です。変化はすぐに出ないので、勇気を出して粘ってみることも必要です。ただ、それでも仮説に自信は持てないかもしれません。仮説が合うか合わないかは、ちょうど仲人さんがお見合いを設定するようなもので、幸せなカップルになるかどうかは、結婚してかなり時間を経過しないと分からないのですから。と言っても、これでは質問に答えたことにならないでしょうね。回り道になりますが、例を挙げて説明しましょう。

 アクション・リサーチはよく医療に例えられます。先生が医師で生徒は患者です。患者が気分がすぐれないで医師を訪れたとします。すると医師は、問診やらレントゲンやら心電図などで患者の体調の原因を探ります。原因がすぐに分かる場合は、それに対処する処方箋を作成し、注射とか投薬とかの手当てをします。でも、すぐに原因が分からないこともよくあるでしょう。その場合でも、医師は患者を投げ出すわけにはゆきませんから、もっとも可能性の高い原因を考え、それに対応する処方を設定し、しばらくはそれを実行してみて、患者の様子が改善に向かっていれば処方を続け、向かっていなければ、別の処方を考えることになります。

 アクション・リサーチの場合も、生徒の実態を調べるために事前調査を実施し、改善に役立つだろう対策を「仮説」として設定します。だが、困ったことに、病気の場合よりも英語授業の場合には要因が複雑に絡んでいて、加えて、レントゲンや心電図のように正確に原因を探る方法も確立していません。せいぜいのところ、アンケートで調べたり、観察したり、小テストで英語力の診断をしたりすることができる程度です。ところが、地域や学校の教育環境やクラスの人間関係など、教師だけでは対応でき要因が授業を妨害することがしばしばあります。ということは、教師がどんなに緻密な仮説を立てたところで、上手くいかない場合もあるということです。ですから、「この仮説はどこでも、誰がやっても、絶対に誤りがない」と言い切れる仮説を立てることは不可能なのです。

 というと、ずいぶん悲観的に聞こえるかもしれません。しかし、これは客観的な事実ですから、事実は正直に認めるべきです。これを認めた上で、「現状の中で、この生徒の状態をすこしでも改善するために、私に何ができるだろうか?」と考えることからアクション・リサーチは始まるのです。もし、絶対に誤りのない対応策がわかっていれば、最初からその対策を実行すればよいわけで、それが明確には分からないからアクション・リサーチで解決策を探るのです。しかし、やみくもに対策を試みても、事態を好転させるどころか、悪化させるだけに終わるでしょう。ですから、できるだけ事前調査をいろいろな方法でやって、生徒の問題点を正確に探ることに努めなければなりません。また、生徒の協力を得て、一緒に授業改善に取り組む姿勢になってもらうように説得し、また、場合によっては褒美をちらつかせ、個々の生徒との関係の親密化を図るなど、手を変え品を変え生徒とチームになる努力をすることが大切です。

 また、一方で、教師には理論が必要です。医師が診断を下すときには、医学の知識が背後にあると同様に、教師の指導法や仮説の設定の背後には、英語教育の理論や、これまで成功した指導例の知識が必要です。そのためには、拙著『はじめてのアクション・リサーチ』(大修館)を読んだり、これまで行われたアクション・リサーチの実践レポートを参照して基礎的な知識を得る努力をします。と同時に、同僚の授業を参観してもらい意見交換を活発にすることによって、英語を教えるプロとしての技能や知識や根性を身につけることが大切です。たとえば、クラスの「書く力」がテストで悪かったとして、「それでは、書く時間を多くしよう」と短絡的に考え、教科書のコピーや和文英訳だけをむやみに多くして満足しているようでは駄目です。なぜなら、「書く」ことができるには「読める」ことが必要だし、「読む」ためには「聞いて分かる」ことが必要だし、また、そのためには単語の練習が欠かせないからです。生徒の書けない原因がどこにあるのかを体系的に探り、それへの対応を考えた仮説を立て、授業を実践することが必要です。

 最初の質問に戻ると、結局のところ、自分の立てた仮説に自信を持つには、生徒の実態をできるだけ正確に把握し、関連する知識や技法を身につけ、また、生徒と協働して問題解決に向かう姿勢をもつことが必要です。それでもまだ、不安が残るかもしれません。よい意味の不安は、常に心に隠し持つべきです。不安はあるが、自分のやってきたことと生徒の可能性を信じて、一喜一憂せずに前進し続ける教師を生徒は期待しているのです。大空に飛び出すギリシャ神話のイカロスのように、「勇気ひとつを道連れに」進んでこそ、プロの教師です。自信を持ってがんばりましょう。

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11/17/2007

AR Navigator 2007 No.25 Follow-up ミニゼミナール(1)

受講者の皆様へ

佐野先生のミニゼミナール第1話、お読みいただけたでしょうか?今後も、佐野先生からの熱い、そして、心のこもったメッセージが届けられます。ARを本当に理解するために必要なアドバイスだけでなく、教師の生き方を考えるうえでも、示唆に富んだものになっていると思います。ぜひ、ご愛読ください。

第1話のフォローアップです。リサーチの検証にあたって、事前テスト、事後テストのあり方について質問がありました。皆さんのARも検証の時期にさしかかっていると思いますので、ぜひ、ご参照ください。

佐野先生のアドバイスのポイントは:

佐野先生「また、ARの成果は数量的なデータだけで判断しないのが原則です。理由は、数量的なデータは、たまたまこの時点で表れた結果に過ぎないと考えるからです。ARの成果を正しく見るには、普段の授業観察や、小テストの成績や自己評価、生徒のアンケート結果、生徒のつぶやきなどを総合して判断します。その意味では、教師の授業中のメモや、生徒のノートや作品なども貴重な資料となるのです。また、教師自身の判断や、授業を他の教員に観察してもらった際のコメントなども資料にします。こうしていろいろな資料を総合的に判断して、このARが効果があったかどうかを判断するのです。」

でした。

テストで客観的なデータを得ることは、確かに大切なのですが、事後テストの点数を上げることや数値データのアップダウンがすべてではないと言うことです。もちろん、それが目的でもありません。結果をもとに、自分自身の授業について、「考えること」が重要なのです。そして、その考察が授業改善や自らの力量アップにつながっていくのです。

Speech evaluationについて書かれた雑誌に、次のような一節がありました:

Criticism is easy; we hear it all the time in every walk of life.
However, criticism is the language of cowards. Criticism is negative.
Even a critique (a term used by non-Toastmasters), being a critical
analysis, almost sounds like a put-down. Evaluation on the other hand
considers the value, the good aspects, and adds value with helpful
suggestions for improvement.

リサーチの結果が思わしくなかったとして、批判することは簡単なことです。しかし、単なる批判からは何も生まれません。ARに必要な検証(評価)の意義は、この一節にある"considers
the value, the good aspects, and adds value with helpful suggestions
for improvement."することでしょう。

楽観的になりすぎてもいけないとは思うのですが、このようなpositiveな姿勢で自らの実践を検証していくことが大切だと思います。

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11/12/2007

AR Navigator 2007 No.25 佐野先生のミニゼミナール( 1 ) 事前テストと事後テスト

皆様へ

佐野先生のミニレクチャーの続編として、今回から「佐野先生のミニゼミナール」をお送りします。「佐野先生のミニゼミナール」は、レクチャーとはちがって
interactiveなものを目指しています。受講者の皆さんと佐野先生の間で、いろいろとやりとりをしながら配信していきたいと思います。ぜひ、様々な質問や疑問点をお送りください。

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佐野先生のミニゼミナール( 1 )

 皆さん、今日は。ご無沙汰しています。皆さんのアクション・リサーチは順調に進んでいますか。まとめに時期が近づくにつれて、「これまでの進め方でよかったのだろうか?」とか、「一応やってはみたものの、自信がない」などの問題意識が生まれるものです。そこで、これから数回に渡り、皆さんから寄せられた質問に答えることにします。必ずしも、この回答が当てはまるとはいえないですが、参考にはなると思うので、是非読んでください。また、自分で抱えている問題があれば、メンターの先生や指導主事に連絡して質問を寄せてください。歓迎します。それでは、When
your life is full of lemons, make lemonade! の精神で頑張りましょう。

                                  松山大学  佐野正之


質問:
 調査を客観的にするためには、数量的なデーターが必要だと言われています。そのため通常、事前と事後のテストをパラレルに行うことが大切だとされていますが、同じテストを使用すれば、事前テストの記憶の影響で事後テストが良い結果になるかもしれないし、あるいは、英語学習が進んでいるのだから成績が良くなって当然で、よくなったのがARのせいだと言い切れないと思うのですが。事後テストと事前テストの関連を教えてください。

佐野先生:
 これは多くの人に関る良い質問ですね。ARの結果を客観的に伝えるには、教師の印象や生徒の感想などばかりでなく、数量的な資料があったほうが説得力があります。そのためには、出だしで調べた生徒の実態が、ARの後でどのように変化したかを数値で示すことが原則です。話しを分かりやすくするために、生徒の語彙力を伸ばすことを目的にして、出だしの調査で英検の過去問を利用して生徒の語彙を調査したと仮定しましょう。

 そうすると、上の質問の意味は、「事前調査と同じ問題で、事後テストをしてもよいのですか」ということになります。答えは原則としては「Yes」です。ただ、条件があります。事前と事後の間に少なくとも3ケ月が経過しており、かつ、事前テストの正解を生徒に示していない場合です。正解を示していれば答えが記憶に残っているかもしれないし、期間が短ければ、問題に慣れているからです。しかし、この原則がどのテストでも通用するわけではありません。たとえば、長文読解の場合は、たとえ、正解は示していなくとも、一度目を通した英文の内容はより早く理解ができるし、英作文の場合でも、一度扱ったテーマはより容易に書き進めることができるので、こうした場合は、同じレベルの別の問題を与えて調べるべきでしょう。

 上の質問には、もう一つの質問が隠れています。すなわち、「調査で出た結果をARの効果と判断してよいのか」ということです。こうした疑問がでるのは当然で、ARで特別な工夫をしなくとも英語力は伸びているはずだから、事後テストの成績がそのまま、ARの成果と言い切れないということです。これもそのとうりです。事前テストと事後テストの成績の比較は、いわゆる「調査結果」であり、それについて判断を下して「結論」を出す必要があります。言い換えれば、調査結果がプラスだったからというだけで、ARの効果を断定することはできないのです。

 では、結果を判断して結論を出すには何が必要なのでしょうか。

 数量的なデータ(この場合はテストの成績)を解釈するには、「もし、このARを実施しないで、いままでどうりの授業を進めていたら、どの程度の伸びが期待できたか。その数値と比較して、事後テストの結果はどうか?」という視点で判断するのが基本です。もちろん、ARをしなかった場合の成果は具体的に知ることはできないのですが、たとえば、4月からARを始める前の時期までの伸び率と、ARで工夫してからの伸び率を比較して考え判断材料にします。また、前年度までの平均的な数値とARを実施したクラスを比べてみたり、あるいは、同じ年の他のクラスと比較して資料を得ることもできるでしょう。

 また、ARの成果は数量的なデータだけで判断しないのが原則です。理由は、数量的なデータは、たまたまこの時点で表れた結果に過ぎないと考えるからです。ARの成果を正しく見るには、普段の授業観察や、小テストの成績や自己評価、生徒のアンケート結果、生徒のつぶやきなどを総合して判断します。その意味では、教師の授業中のメモや、生徒のノートや作品なども貴重な資料となるのです。また、教師自身の判断や、授業を他の教員に観察してもらった際のコメントなども資料にします。こうしていろいろな資料を総合的に判断して、このARが効果があったかどうかを判断するのです。

 また、発音の調査、スピーキングの調査、ライティングの調査などは、最初から評価の基準を定めて事前調査をすることは、実際は時間がなくてできないのが実情でしょう。その場合は、差し当たり録音とかコピーとかして、資料だけを残しておきます。その上でARの結果をまとめる上での必要に応じて、その資料のどこを使うかを判断して、分析することにします。全員の分析が時間的に無理があれば、無作為に数名の生徒を選んでその生徒についてだけ分析することも可能でしょうし、あるいは、「上位5名」「下位5名」を選択して調べることもできるでしょうし、逆に、上位と下位の生徒を除外した「中位の10名」を対象にすることもできるでしょう。分析の対象としてどれを選ぶか、また、どの資料を集めるかなどは、全て「このARは何を目標としているのか」というリーサーチ・クエスチョンとも関連して、結局、どのような方法が授業改善に結びつくのかを明確にするためのものであることを心に留めて実施することが大切です。最後に、ARは論文を書くために実施するのではなく、授業改善が目標なのですから、その視点からリサーチの意味を総括することがなによりも重要です。それでは、幸運を祈ります。

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11/01/2007

The creative individual has the capacity to free himself from the web of social pressures in which the rest of us are caught. He is capable of questioning the assumptions that the rest of us accept.

- John W.Gardner

10/31/2007

A pessimist sees the difficulty in every opportunity; an optimist
sees the opportunity in every difficulty.

-Winston Churchill

10/30/2007

Criticism may not be agreeable, but it is necessary. It fulfils the
same function as pain in the human body. It calls attention to an
unhealthy state of things.

- Sir Winston Churchill

10/29/2007

It is hard to interest those who have everything in those who have nothing.

- Helen Keller

10/26/2007

Even where sleep is concerned, too much is a bad thing.

- Homer

10/17/2007

Don't say you don't have enough time. You have exactly the same number of hours per day that were given to Helen Keller, Pasteur, Michelangelo, Mother Teresa, Leonardo da Vinci, Thomas Jefferson, and Albert Einstein.

- H. Jackson Brown, Jr.

9/10/2007

AR Navigator 2007 No.24 佐野先生のミニ・レクチャー(13)

佐野先生のミニ・レクチャー(13)

まとまりのある英文はできたか、学生の感想はどうか

前回のレクチャー(12) では、初稿までの活動と具体例を報告しましたが、そ
の後、2回講義をして第2稿まで行きましたので、今回はその結果をお知らせし
ます。まず、次の11月13日の授業では、集めた初稿を全員に返しました。初
稿を集めたのは、どの程度の語数を学生が書いているかを調べるためでしたから、
添削や評価はしませんでした。ただ、語数が200語以上あれば、Good! 不足し
ていれば、「頑張れ」と書いただけです。その後、授業ではワークシート(2)
(添付資料参照) を配布し、Body に相応しい導入と結論を考えることが本時の
目標だと告げました。導入の文を考え、また、文の締めくくりかたを工夫し、途
中のそぐわない文を削除し、また、文法やスペルのチェックをさせました。

活動としてはワークシートの解説以外は、表現の内容が異なるし、熱意や英語
力にも差があるので、「作品は小テストと同等に評価する」と告げ、後は各自の
個別作業にしました。この間、「表現の仕方がわからない者や文法的に自信のな
い者は、遠慮なく質問にくるように。訂正してもらっても、もらわないでも、出
来上がった作品で評価するので、質問をしたほうがとくだ」と励ましました。結
局、10名たらずの学生にしか対応できませんでしたが、もっと個別に指導でき
ればよかったと思います。当初は、授業時間内に2nd draft を書き終わらせ、提
出させたいと思っていたのですが、一人として作業を完成したものがいなかった
ので、次ぎの授業の冒頭に提出させると告げて、宿題としました。風邪がはやっ
ているようで、10名ほどの欠席者がいたのも原因です。

次ぎの週、11月20日には、まず、10 分間時間を与えスペルや文法の間違いを再
度、自己点検させました。その後、「自己評価のための活動」(添付資料参照)
の用紙を配布し、mapping 以下の活動についての自分の取り組みを振り返らせま
した。次ぎに、4人でグループを作らせ、他の3人の仲間の作品を順番に読み、
良かった点や面白い点を書き手に告げると同時に、文法やスペルの誤りで気づい
た点は指摘してやるように指導しました。一人の作品を読む時間を5分と定め、
5分終了後に教師の合図でコメントを行い、また、教師の合図で次ぎの作品を読
むというようにしました。放置すると一生懸命読まなかったり、コメントをしな
かったりということが起きるためです。その後、配布の評価の活動シートに、自
分の作品を点数化して、合計点を書かせました。狙いは、友達の作品を読んで感
想を交換したあとで、自分の作品を教師が示した評価基準で評価したらどのよう
な点数になるか、自分の作品のどこが良くて、どこが弱いかを意識させるためで
す。自己評価の用紙は、作品と一緒に提出させ、自己評価が甘すぎたり、厳しす
ぎて教師の評価と大きく異なる場合には、評価の見直し点を指摘しています。ま
た、文法の見直しのポイントなども評価表に記入するようにしています。

こうして集めた2nd draft と自己評価表に私が目を通して、評定をいつものよ
うにA, B, C にプラス、マイナスをつけて返却する予定です。全体的には、学生
はmapping 以下の活動にかなり積極的に取り組み、語数では最高4 00語を超えた
ものもいて、全員がそれなりの工夫をして、まとまりのある英文を書いていまし
た。ただ、風邪のためか、欠席者が10名ほどいて、全体的な成績はまだ正確に
掴んでいません。風邪での欠席ではなく、この宿題のために欠席したものもいる
かもしれませんし。

実は、ミニ・レクチャー(13 ) では、前回紹介した作品がどのような導入と結
論を加え、正確さとまとまりを強めた文章になったかを知らせる予定でしたが、
本人が欠席してしまって、未提出なので、別の学生の書いた作品(A− の評価)
を紹介します。(英文ママ)

Do you wish for a long life? Usually, we think that we are happy if
we can live a long life. It means that we need to take care of our
health. Then what are important for our health? I think that exercise,
food, sleep and environment are important.

As for exercise, I play soccer with my friends in the stadium near my
house every Sunday. I have played with them for five years. Every
Sunday we play soccer very hard for about three hours. We feel
refreshment of mind and body by playing soccer.
As for food, I eat sushi about once a week. It does not cost much but
it tastes very good. A good thing about it is that it is healthy.
Vinegar is effective for physical fatigue. But sushi is a bad thing,
too. A bad thing about it is that I eat sushi too much. Overeating is
prejudicial to the health. I must take care to eat too much and want to
eat deliciously.

As for sleep, I go to bed early and get up early every day. Sitting
up late is not good for the health. So I go to bed at nine o'clock .
An old saying tells us that the early bird catches the worm. I think
that sleep is very important. So I sleep for a long time.
As for environment, I live in Higashiyamato and good environment.
Higashiyama surround nature. So it's a clear atmosphere. Air is
important for health.

To sum up, health depends on our daily life. A long life doesn't
talk without a good life plan. Let's set a high value on health!

Is とhaveが混同していたり、受動態が間違っていたり、動詞が適切でないの
で意味がよく理解できないなどの部分もあるが、導入、展開、まとめとある程度
一貫した流れで文章をまとめようとしていることが読み取れる。このレベルの学
生にしては大健闘である。自己評価の感想欄には、「主題に対して興味がわく導
入を考え、例を出すことで主題を引き立て、まとめて分かりやすい文章を書くと
いう長文作成の基礎を学んだと思います。マッピングを通して、書き方がわかり
やすくなったと思います。ただ、文法、スペルの間違いをなくすることが私の今
後の課題です」と書いている。この文章の前半では文法的な誤りが少ないのは、
授業中に私の指摘を受けて改善したからで、自宅でした後半の部分に素直な英語
力が現れている。ただ、積極的に考えて書こうとする姿勢が見れたのは、大いに
評価してよいと思う。来週からは趣をことにして、物語文に挑戦させようと思っ
ている。流れは今回と同じなので、しばらくはここで報告はしないが、最終結果
は乞うご期待。


<資料>

ワークシート(Health-2)

1.First Draft では、200語以上書いた人は31名のうち、26名でした。書けなか
った人も120語 程度でしたから、もう少しです。(ここでは評価しません。)第
2段階では、導入と展開と結論が一本線になるよう導入の工夫、展開の整理、結
論のまとめ方を考えます。その上で英文の誤りを訂正して2nd draft を完成しま
す。今日はここまで授業します。

2. 導入は、内容に興味を持たせ、概要を知らせることです。よく使われる方法
としては、

a) 諺や一般に信じられていることから始める。

例)An old saying tells us that health is better than wealth. This
means that we should take a very good care of our health. Then what are
important for our health?

例)It is often said that young people take health for granted. They do
not realize its importance until they have lost it. Then, what are
important for our health? 

b) 相手が驚く疑問文や情報から始める。
例)Don't you know you're losing your health for a small amount of
money? You really are, if you do not have enough sleep, because of your
part time jobs.

例)According to today's newspaper, 60 % of young people are leading an
unhealthy life because of too much fast food and lack of exercise.

3. 展開の整理

a) 導入から結論へとつながらない文章はカットする。主語を一致させ、具体的
に記述。
b) 同じパラグラフの中に同じ表現、たとえば、I play は2回以上続けて使用
しない。
c) 頭の部分で前との繋がりを考え、終わりでパラグラフごとにまとまりの文を
入れる。

As for A; First, second, ; Talking about A. ; Concerning A ; など。

4. 結論の部分

読み手が、なるほどと思うようなまとめ方が理想。一番やさしい方法は、導入
の部分で用いた文を生かして、それをもっと具体的に言い直す。

例)In short, my weakest point is that I do not sleep enough. I must
have more sleeping time in order to stay healthy and to be a good
university student.

5. 英文の点検:特に次ぎの点で見直す。

1) 主語と動詞の一致。動詞の時制。  2) 動詞なのか不定詞や動名詞なのか。
3) 数えられる名詞か数えられ名詞か。複数か単数か。 4) 接続詞の用法。
5) スペル・チェック。PCのワード機能を使えば単純なスペル・ミスはなくなる。

全ての点検が済んだら、用紙に書いて来週に提出。小テストとして評価します。

自己評価のための活動
学籍番号      氏名

この活動は自分のHealth に関する活動を振り返るためのもので、ここでの自
己評価の点数が直接、作品の教師による評価に反映するわけではないので、正直
に書いてください。

1. ここまでの活動を振り返り、それぞれの段階での取り組みを評価してくださ
い。それぞれの評価は、A(大変よくできた)、B(よくできた)、C(駄目だった)と
考えなさい。
1) Mapping (A, B, C) :感想
2) First Draft (A, B, C):感想
3) 見直し(A, B, C): 感想
4) 2nd. Draft (A, B, C) : 感想
その他、全体的な感想:

2. 友達の作品を3つ読みなさい。それぞれに感想(特によかった点)を知らせ、
また、気づいたら文法やスペルの間違いを知らせてあげなさい。(友人からのコ
メントはノートに書きとめておきなさい。)活動が終了したら、読んだ作品や友
達や活動にについて感じたことや発見したことを書きなさい。

3 自分の作品をより細かく点数で評価してみよう。内容(30点)、組み立て(20
点)、文法(20点)、単語(15点)、スペルや句読点(15 点)と考えて評価しなさい。
1) 内容(豊かで興味深い)    A(30-25) B(24-15) C(14-8) 自分の点数
2) 組み立て(パラのまとまりと形) A(20- 17) B(16-11) C(10-6) 自分の点数
3) 文法(重大な誤りと他の誤り) A(20-17) B(16-11) C(10-6) 自分の点数
4) 単語(正しい単語の使用)  A(20-17) B(16-11) C(10-6) 自分の点数
5) スペル・句読点(誤りがない) A(10-8) B(7-5) C(4-1)   自分の点数
合計点数

4) Health について書く活動を通して気づいたこと、次ぎの活動への要望などを
書きなさい。  

9/09/2007

AR Navigator 2007 No.23 まずは3週間

皆様へ

残暑とは名ばかり、猛暑の毎日が続きました。

アクションリサーチを使ったこのプロジェクトを初めて
5年目となっています。年を経る毎に、少しずつ、ノウ
ハウが蓄積されてきています。もちろん、それでも、分
からないことがたくさんあるのですが。。。

代表的な疑問点は、「いったい、一つの仮説をどのくらい
の期間続ければ、効果がでるのか?」という問題です。
これは、1年目からずっとある質問なんですが、はっきり
としたことは分からないのです。

ある意味、分からないことは当然です。クラスによって、
生徒の実状も実態もことなるのですから、一般論として、
どのくらいの期間が必要かということは言えない。

で、今では、3週間程度だろうということに、なってい
ます。あくまで、目安ですが。佐野先生も経験的にこの
程度の期間が良いだろうとおっしゃっています。

とにかく、3週間、一つのことにこだわって実践を続けて
みてください。そして、様々なアンテナを張って、変化を
みていってください。

そこで、立ち止まって一度、十分な「省察」(reflection)を
してみることが大切です。


9月から12月の期間は、1年間でもっとも腰を落ち着けて、
授業実践に取り組める時期であるとともに、行事なども多く、
あっというまに過ぎてしまうものです。今年の秋は、「授業」
に徹底的にこだわりましょう。


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"You never really lose until you quit trying."

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AR Navigator 2007 No.22 佐野先生のミニ・レクチャー(12)

佐野先生のミニ・レクチャー(12)

こんなに長い英語の文章が書けるなんて自分でも驚いた!

前回の授業では、ミニ・レクチャー(11) で紹介したように、mapping に書い
た各項目について、疑問詞を上げペアでQ and A をさせ、それを項目ごとにまと
めた英文を書かせ、最後にまとめてfirst draft を書くという作業をさせました。
当初は口頭でやる予定でしたが、疑問文の作成にも苦労する学生がいることを考
慮して、添付のような「ワークシ-ト」を作成し、それに沿って授業をしました。
おおむね、次ぎのように進行しました。

(1) 授業のゴールと流れを説明した。まず、mapping は各自で作成してきたと
思うが、今回は練習のために教師がモデルで示した形を用いて、沢山のQ and A
をペア・ワークで実施する。その結果を項目ごとにまとめて、最低でも50 語の
パラグラフを書く。最後に、全体をまとめて200 語以上の文章を書き、終了時に
提出する。

(2) ワークシートを用いて、exercise, food, sleep, environmentの項目のそ
れぞれに思いつく動詞をひとつずつ書かせ(実際は、教師が意見をまとめて、そ
れぞれplay, eat, sleep liveと指定した)、それを用いて教師が疑問文の基
本形(一般動詞、be 動詞、過去形、現在完了など)を版書して口頭練習をさせ、
その後、学生に指名して回答をさせ、Q and A のモデルを示した。大学生になっ
て一般動詞やbe 動詞の疑問文や否定文などを口頭練習するのも奇異に思われる
かもしれないが、こうすることで以降の活動もスムーズに、より正確に展開する。
過去形や現在完了に関しては、意味も含めて注意させた。

(3) その後、ペアで聞き手と話し手の役割を分担し、exercise をテーマに3分
と時間を区切って聞き手はできるだけ沢山、すばやく質問するように、話し手は
full sentence で答えるだけでなく、できれば一文でもよいから説明も加えるよ
うに指示してQ and A をさせた。3分後、教師の合図で役割を交代させ、同じこ
とを繰り返させた。終了後、2分間で、今交わした会話の中から、自分のエッセ
イに入れると面白いと思うものをメモで書き出せた。会話の中で、思いついたこ
となども日本語でよいからメモで残すようにさせた。

(4) 次ぎに席を移動し(方法については、以前のミニ・レクチャーを参照のこ
と)、別の相手と次ぎのテーマ(food) について、同様の要領でQ and A を実施
させた。ただ、時間は短縮して、それぞれを2分で終了するようにして、さらに、
sleep やenvironment でも同様の活動に取り組ませた。結構、興味深い対話も行
われていて、たとえば、environment では、T—P では次ぎのような対話が行われ
た。

T; Where do you live?
B: I live in Tokorozawa.
T: Is the environment good around your house?
B: Yes. The air is fresh, water is clean. We have a lot of trees.
T: Is there anything you worry about the environment?
B: Yes, there is
T: What is it?
B: My father, brother and I all smoke a lot. The air in my house is
very bad.
T; I see. The environment outside your house is wonderful but that
inside is awful. What do you think you can do to improve the
situation?

(5) 時間がきたので、会話が終了していない者にも対話を終了させ、ここまで
各項目のまとめとして書いた文章を利用し、自分の考え入れて、少なくとも200
語以上の文章を書いて提出するように指示した。ここでは、流暢さが大切で、自
分の発想を豊かにすることがねらいだから、分からない単語は日本語でもよいし、
文法的な誤りやスペルなどは気にしないでよい。ただ、パラグラフに気をつけて
書くように。 200 語以上書いたものは、作品を提出して、時間前でも退出して
よいと伝えて動機づけをした。

(6) このような指示を出したのは、授業終了の25分ほど前だが、その後20分過ぎ
には最初の学生が提出した。彼の書いた英文は次のようなものである。(英文マ
マ)

I think that exercise, food, sleep and environment are important for
our health. As for exercise, I don't play any sports, because I belong
to music club. But instead, I walk every day. I walk to university
from Odakyu Tama Center Station and also walk with my father every night
for health. It is very fun!
As for food, I eat instant ramen at home and university's cafeteria
many times a month. It is very cheap and good for students and it is
delicious. I also eat fast food many times. So I can't say I have
food balance. I have too much salt. It is bad for my health. So I
must have dinner at home. I think I should get home early so that I can
eat dinner that is made by my mother.
As for sleep, I usually go to bed at 2:00 a.m. and get up at 6:00 a.
m. So I sleep four hours. I want to seep more. I think that sleep is
more important than food. So I should sleep more time.
As for environment, I live in Yokohama. Cars, trucks and buses are
running near my house every day and night. So the environment has very
bad air and it is noisy.
So it is not good for my health. But natural environment near my house
is good. For example. I see many forests near my house. I can relax in
there. (244 語)

この学生は、求めたわけではないのだが、最後に次ぎのようにコメントを書いて
いた。

「まとめたものを書くと非常に多くの語数があったので自分でも驚いた。今ま
で200 語を越えたことは一度もなかったので嬉しいです。」

実際、大部分の学生は、「語数を多くすることはやさし」と思ったようで、当日、
出席の31名(クラス36 名)のうち、時間内に200 語を書きおいた学生は25名、
終わらなかったものは6 名だった。ただ、この6名も、120語以上は書いてい
る。

全体的に見れば、ここまでのところ、mapping させて、それを基礎に平易な英
語で多くの対話をさせ、それをヒントに語数を多く書かせて、その中で、英文法
の復習も繰り返し行うという今回の方針はうまく作用しているようだ。次ぎのス
テップとしては、導入、展開、結論を意識して、一貫したまとまりのある英文に
することと、文法的な誤りを減らすことで第2稿を完成させることだ。この点は

次回に、また、実践を踏まえて報告したい。

Worksheet (Health)
マッピングをもとに、以下の質問をヒントに、自分の考えを深めよう。
1. What are important for our health?

例: I think that exercise, food, sleep and environment are important.

2. How about exercise? Do you play any sports?

例:-Yes, I do. I play baseball.

質問例:

(現在のこと) Where do you play baseball? その他に when, with whom, 
how often, how long, why, what is a good thing about( playing
baseball? )回答はノート  

(過去のこと) When did you start playing baseball? I started playing

(現在完了)How long have you played baseball? I have played it for
three years.

回答の中から、読み手に興味のありそうな文をいくつか選んで、文章を書きなさ
い。

例: As for exercise, I play baseball in the park every Saturday. I
play it with my classmates in my junior high school days. We started to
play baseball when we were elementary school students. So we have
played for more than 15 years. Every Saturday, we play baseball very
hard for about two hours. Why do we play it hard? Because we think it
is fun to play it hard.

3. How about food? What is your favorite food?

例:My favorite food is ramen.

質問例:When do you eat it? Where do you eat it? How much do you eat
it?
How much does it cost? What is a bad thing about it? など。回答は
ノートに。

回答を利用して書いた文例
As for food, I eat ramen at least four times a week. It does not cost
much and it tastes good. A bad thing about it is that I eat ramen too
much and drink all the soup. Therefore, I take too much salt and it
's not good for my health.

例を参考に自分の文章をノートに書きなさい。

4. How about sleep? Did you sleep well last night?

質問例: When do you go to bed and get up in the morning? How long do
you sleep a day? Is it enough for you? Which is more important, to
sleep well or to eat well?

5. How about environment? Where do you live?

質問例: What are good things about you place? Is the natural
environment good there?
How about the air, water, noise, etc. ? Is there anything you worry
about them?

これらの文例をまとめて、導入、展開、結論を考えて文章の初稿を書きなさい。


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☆英語教員指導力向上研修メーリングリスト
"You never really lose until you quit trying."

【授業改善プロジェクト担当】高等学校課 長崎政浩
PHONE 088-821-4907 FAX 088-821-4547
EMAIL masahiro_nagasaki@ken2.pref.kochi.jp
U R L http://www.kochinet.ed.jp/center/kyouka/kochieigo/index.htm

9/04/2007

AR Navigator 2007 No.21 佐野先生のミニ・レクチャー(11)

佐野先生のミニ・レクチャー(11)

マッピングまでは分かるのだけど、その後はどうするの

嬉しいことに、ミニ・レクチャー(10 )の反響がさっそくありました。内容
は、「マッピングで要点を思いつかせることは何度も自分でもやっていて、それ
なりの効果はあることは分かっているのだが、英語力のない生徒に、そこからど
う発展させていったらよいかわからない。マッピングだけでは、レベルの低い生
徒にはあまり役立たないのではないか。彼らは、内容もそうだが文の形そのもの
が思いつかないのだ」という指摘です。当然の心配で、私もこれからどうもって
いったらよいか迷っているところなのですが、来週の講義では、次ぎのような試
みをしてみようと思っていますので、その内容をお話します。ただ、これは成功
の保証はありません。結果は、また、実施したのちにお知らせします。

まず、今回はHealth というテーマですから、前回の講義では、What are
important for our healthy? と質問して、マッピングをまとめたのですが、そ
こでは、exercise, food, sleep, environment などの項目が挙がっています。

そこで、来週の授業では、その一つ一つについて、一文を選んでそれを基本文と
し、それにいろいろな疑問詞と結び付けて、モデルに習ってP-P で対話させ(あ
るいは、対話に先立ったノートに書かせるかもしれません)をさせる予定です。

たとえば、マッピングにあるexercise の項目を取り上げるとすると、学生の誰
かに、What sports do you like? Do you play baseball? などの平易な質問を
し、そこから基本文を出してI play baseball. を版書します。次ぎに、where,
when, who, how often, how long, why, what is a good /bad thing about
などの疑問詞も版書します。次ぎに、このように伝えて活動に入ります。

「これから疑問文作り競争をします。ペアのひとりは、板書したある文章を自分
の言葉として、I play baseball. と発話してください。相手の人は、版書して
ある疑問詞をできるだけ使って、どんどん質問します。まず、先生が質問する人
になってモデルを示しますから、皆さん全員が先生のペアになって答える練習を
してください。質問の仕方や答えかたの分からない人は、ノートに書いてもよい
です。その後、パートナーを変えながら、ペアで活動を実施します。自分は
baseball をしない人もこの練習では野球をすることにして、ほかの質問にも想
像力を用いて答えてください。では、練習です。S.1, will you start?

S1: I play baseball.
T: Where do you play baseball? In a full sentence, please. S2.
S2: I play baseball in our school ground.
T: When do you play baseball? (途中省略)
T: What's a good thing about playing baseball?
S6: It's fun and good for health.
T: Do you really think so? When did you start to play baseball?
How long have you played baseball? Do you think it is good for your
health to play baseball?

などと、すこし発展させた質問も加えて、対話練習をさせます。この質問は、大
部分は現在形で進めていますが、過去形や現在完了が入っているので、その文は
板書して注意を向けさせます。なぜなら、主語と動詞の語順と動詞の時制が
global errors で一番多いものなので、この点については、多少、きめ細かに指
導します。

このようにして、同じ流れで2人程度と会話をさせたのちに、自分がexercise
やsportsの項目で書きたいことをメモさせておいて、次ぎの項目のfood に移り
ます。やはり教師が質問のモデルを示します。具体的には、What is your
favorite food? How often do you eat it? Where do you eat it? Is it
good for your health? What's a bad thing about the food? などの質問が
考えられます。次ぎのSleep に関して、 When do you go to bed? How long do
you usually sleep? Is it enough for you? Which is more important, to
eat well or to sleep well? などの質問があるでしょう。Environmentであれば、
Where do you live? Is the natural environment good there? What are
good about the natural environment around your house? How about the air,
water, noise, etc.? Is there anything you worry about them? What do
you think you should do to stay healthy?

というような質問を用意して、生徒の考える力を活性化させてから、「結局、こ
の項目について、自分が言いたいこと、表現したら興味深いことは何か選んで、
それぞれ50 語以上の文章になるように書いてみなさい」と指示しようと考えて
います。 その後、書いた文章を並べ替えて、まとまりのあるessay にさせたい
のですが、それは来週はできないでしょう。その先は学生の動きを見てから考え
ることにします。

実は、後期の授業目標は、教師の質問をヒントとせずに、まとまりのある文章
を書くということなので、こうした質問を与えるのは本来のねらいからははずれ
たことをすることになります。ただ、与えられてテーマにどのように迫るかその
方法に気づかせるには、こうした指導も初期の段階では必要ではないかと思いま
す。学生によっては、すでにアイデアがあるので、こうした質問は邪魔だと思う
ものもいるでしょうが、そうした優秀な(?)学生にも参加してもらわないと、
活動がスムーズに進みませんから、現在のところは全員参加を考えています。ま
た、こうした簡単な質問を考えたり、繰り返し答えることは、頭の中の語順や時
制の知識を自動化して使える知識にするし、そうすることで、より多くのことを
考える余力ができるので、嫌がらずに練習することが必要だと説得します。私は
いつも、「人間は走る前には歩けなければならない。歩けるようになるにははい
はいができて、立ち上がれなければならない。 はいはいが満足にできないうち
に、格好をつけて走ってみても、転ぶばかりだ。格好悪くとも、まず、はえずり
回れ」と繰り返し話しています。さて、これでうまくいくかどうかは、次回の便
りをお楽しみに。

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☆英語教員指導力向上研修メーリングリスト
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【授業改善プロジェクト担当】高等学校課 長崎政浩
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9/03/2007

AR Navigator 2007 No.20 いよいよ実践

夏も終わり、いよいよ新学期。(すでに始まっている学校もあり
ますが、とりあえず。)

オリエンテーションから夏までかけて、担当クラスの分析や授業の
振り返り、そして、仮説の設定まで行ってきました。夏の集中研修
では、グループごとに報告し合い、前半の実践研究について、いろ
いろと考えることができたのではないかと思います。そして、事例
研究では、これからの実践に向けての、何らかのヒントを得ることが
できたのではないかと思います。

いよいよ実践です。

1)アクションリサーチは授業そのもの

授業にプラスして何かを行うのではありません。授業の中で、授業を
改善するために行うリサーチであることを、今一度確認しておいて
ください。基本は、皆さんが日頃やっている授業です。奇抜な、目新しい
ことを、「とってつけたように」導入することはないのです。

2)記録をとりましょう

授業を進めながら、しかも、多忙な中での実践研究ですから、おの
ずから限界はあると思いますが、何か一つだけでも、続けてください。
フィールドノート、簡単に授業日誌、指導略案へのメモ。いろいろと
あると思います。時折は、検証のための授業評価やテストも必要です
が、日常レベルで、ずっと続けられることを一つ決めましょう。

3)まずは、変化を楽しむ姿勢が大事

リサーチの結果がどうであれ、「昨日とは違う自分」「昨日とは違う
授業」、何か変化を発見して、その変化を前向きに解釈しましょう。
もちろん、あまりに「脳天気」に浮かれてしまうことはどうかと思い
ますが、まずは、positiveに自らの変化を楽しみませんか。

4)授業公開を

同僚の意見は貴重です。自らのリサーチが独善に陥らないためにも、
積極的に授業を開きましょう。


5)結果は、真摯に受け止め、自己変革を

どんなにがんばったとしても、生徒に十分な英語力が定着しなかったり、
意欲が育ってこなかったとしたらやはり、どこかに問題があるのです。
リサーチの結果を受けて、あらゆる角度から「考え抜く」ことが必要
です。

"We do not learn from experience; we learn by thinking about our
experience."(Navigatorより)

もう一度、この言葉をかみしめてください。


それでは、また。

--
長崎政浩  "You never really lose until you quit trying."
高知県教育委員会事務局 高等学校課 チーフ(学校教育担当)
780-0850 高知市丸の内1-7-53  【TEL】088-821-4907
【URL】http://www.kochinet.ed.jp/koukou/


【BLOG】「風、きらり」

http://kazekirari.sblo.jp/

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8/01/2007

AR Navigator 2007 No.19 佐野先生のミニ・レクチャー(10)

佐野先生のミニ・レクチャー(10)

「また、また、長のご無沙汰になりました」

後期になったら、一向にミニ・レクチャーが届かない、どうしたのだろうと不
思議に思った方もおられたと思います。私が講演や原稿整理に追われていたこと
もありますが、月曜は休日とか学園祭で分断されてまとまった講義ができなく、
思うように計画が進まなかったというのが第一の理由です。ようやく久しぶりに
昨日講義があったので、その様子をお知らせして、後期に私がやろうとしている
ことを知らせたいと思います。

まず、再度、後期の講義の全体目標と評価の方法について徹底を図りました。
後期の講義の最終到達目標は、200 語程度のまとまりのある英文を、教師から質
問の形で与えられるヒントなしに書くことができ、そこでのglobal errors は1
ヶ以下に押さえることと、自学自習の姿勢を伸ばすということでした。その具体
的な方法としては、教師が与えたテーマについて、自分の考えをまず自由に
mappingの形で書き出し、そのそれぞれについてできるだけ沢山の単文(ないし
短文)を書かせる。次ぎに単文を読んで、それぞれの結びつきの強いところを関
連づけてparagraph の下書きをする。さらにparagraph の関連を、introduction ,
body, conclusion に分類して、全体の下書きを初稿として書かせ、次ぎに英文
の正確さをcheck させてsecond draft にして、それをさらにつなぎ言葉などを
用いて完成版の3rd draft にするというものです。実際のところ、このクラスの
学生には、少し欲張りすぎた目標なのですが、その分、進度を緩めて、学期に4
つ程度のまとまりのある英文が完成すればよいと考えています。

そうなると、それぞれのdraft で何を個々の学生が考え、どう改善していった
かが見えなければなりません。そこで前期のように、2時間ごとに作品を紙に書
いて提出させて、それを私が添削して帰すという方法では心の動きが見えません。
また、添削をして返却しても、それが次ぎの作文に生かされて正確さが増したと
いう実感はなかったように思います。ですから、後期には自分が何を表現したい
か次第に堀さげる形にしたい、また、いつもどのような誤りを犯すのかに注意を
向けて、それを振り返る形にしたいと思ったのです。もちろん、学生に任せきり
では、自分の考えの深まりや誤りに気づくことはないので、2nd draft ができた
あたりで一度、英文のチェックを私がしてやることをしなければなりませんが、
基本的には学生が自分の作品を何度も見直し、版を重ねて書き直しをすることが
大切だと思ったのです。ですから、学生には、「毎時間日付を書いて、時間内に
自分がした作業や作品だけでなく、英文の訂正や家庭でした勉強を含めて、ノー
トに書き出してゆくように。また、それに関連して、そこで自分や友達や英文に
ついて感じたことや知ったことをできるだけ細かく書き出しておいて、教師がそ
れを見たときに、どんな勉強をし、何を考えたか、結局、どんな成長をとげたか
が分かるように記載しておくこと。後期の成績の6割は、ポートフォリオの形で
書かれたこのノートで評価する」と伝えてあります。

ただ、ポートフォリオだけでは英文の正確さは増すことは期待できません。当然、
文法の練習も大切です。だが、実際問題として、学生の能力差がかなり大きく、
それぞれが勉強を必要とする文法項目にも相違があります。ですから、一つは
mapping のモデルを教師が示す中で、必要な表現を文型の形で与えて口頭での練
習をさせると同時に、それぞれが自分の弱点と思った点を、教科書の文法問題を
やることによって見直すことができるように、その回答はすべてコピーして配布
してあります。実際は、進んで文法の勉強をする学生は多くはないと思うので、
教師が点検する折に、「関係代名詞の箇所の復習が必要」というような注をつけ
てやって、その部分を自分でノートに調べて書くという活動になると考えていま
す。また、学生によっては、「教科書レベルは沢山だ」と考えているものもいる
ので、そうした者は、必ずしも教科書でなくとも、自分の弱い部分を補強する勉
強を自主的に実施していることが分かるような記述をすればよい。それも嫌なも
のは、英語検定などの外部テストで実力を証明すれば、それでもよしと告げてあ
ります。逆に、英語が苦手なものは、期末テストで長い英文を書くことはできな
いだろうから、日常のノート作りと振り返りをきちんとしておくことが単位の修
得には必要だと注意しています。

これまでのところ、mapping の方法を知らせ、portfolio の作り方を教えること
にかなりの時間がかかり、テーマもMy future plan を扱ったばかりです。これ
も細切れの時間で内容的な定着がいまいちの様子だったので、昨日は2つ目の
Health というテーマで、教師が英文を話しながら、mapping のmodel を示し、
それにならって学生たちはそれぞれにmapping を作成しました。それができない
学生には、教師のmodel から興味のある部分を選んで、自分なりのmapping を作
成させました。次ぎに、それぞれの項目でできるだけ沢山の単文を書いて、合計
でも200 語になるように書くように指示しましたが、途中で時間切れとなったの
で、残りは宿題としています。また、一方で、教科書の本文のHealth and
sports に関連する文章を音読させました。英文が難しく、学生には抵抗がある
のですが、一つは音声面の練習も必要だし、かつ、テーマに関連する語句も出て
くるので、その中で興味を持った表現を覚えて欲しいと願ってのことです。また、
できれば自分の書いた作文を音読して発表させたいので、期末テストには、音読
も入れると告げてあります。デベートの形までもってゆければ最高なのですが。

このような状態ですから、現在のところこの方式がうまく行く保証はありません。
このテーマが終了したら、学生にアンケートをとって、その結果からまた、軌道
修正をするかもしれません。だが、結果はどうあれ、常に上を目指してチャレン
ジ精神を学生にも、自分にも求めてゆきたいものです。というわけで、今日のと
ころは、後期の授業がようやく動き始めたという報告です。


 ※昨年度のミニレクチャーを再送しています。

7/31/2007

AR Navigator 2007 No.18 充実した協議にするために

皆様へ

暑いですね。ちょっぴり欲求不満の残ったサッカーアジア杯も終わり、いよいよ
8月。来週には夏期集中研修が始まります。

夏期集中研修での授業改善プロジェクトの流れは、Navigator No.15でお知らせ
したところですが、およそのイメージはつかめていただけたでしょうか。

小グループで行うプロジェクト班別協議が3日間のハイライトの一つです。ここ
を充実させるために、いくつかお願いしたいことがあります。

1)ポートフォリオは絶対に忘れないように
   ※必要な課題が全部入っているか確認を!

2)ポートフォリオで振り返り
   ※夏期集中研修までにじっくり眺めておいてください。
    大切なのは「ポートフォリオ」そのものではなく、
    「ポートフォリオ」をもとに、何を、どう考えたか
    なのですから。
    
3)現物をもってきてください
   ※授業の話をするときは、「具体的なもの」があることが
    重要です。教科書、ワークシートなどはもちろん、生徒の
    作品、テスト、授業評価の結果など、協議のなかで伝えよう
    とすることを補強(support)してくれるevidenceをもってきて
    ください。100の説明よりも、現物です。

4)スタート地点が分かるものを
   ※生徒の英語力の現状、授業の様子など、リサーチのスタート地点
    が分かるものがあると良いと思います。テストの結果、生徒の書いた
    英語、録音したテープ、授業のビデオなど。

5)どこを目指していますか?
   ※どのような変化、どのような改善を目指しているか。明確なゴール像
    をもっておくことも大切です。
    

7/29/2007

AR Navigator 2007 No.17 佐野先生のミニ・レクチャー(9)

佐野先生のミニ・レクチャー(9)

授業は賽の河原の石積みか?

皆さん、お久しぶりです。「ミニ・レクチャーはどうしたのだろう?」と思っ
ていた方もおられたことでしょう。実は、大学は夏休みが長くて、つい昨日、よ
うやくこのレクチャーで紹介してきたクラスの後期の授業が始まりました。

前期の授業の総括と期末のテスト結果は「ミニ・レクチャー(8)」でお知らせ
しましが、おおまかに言えば、学生の書く力も意欲もかなり向上し、後期は、教
師からのヒントがなくとも、与えられた話題についてまとまりのある200 語程度
の英文を書けることを目標にする、英文の正確さを増す指導の工夫をする、学生
の自主的な学習を励ますという方針を書きました。また、夏休みの宿題には、
150 語程度のスピーチを書いてくること、さらに、意欲のある者は教科書の文法
問題をやってくることという指示を出していました。

さて、昨日、久ぶりに教室に出て驚きました。中央の席には誰も座っておらず、
隅に固まり大声で雑談していて、私の声さえ届かないありさまです。前期末には、
「ペアで座る」とか「意欲的に発話する」というルールは、ほぼ全員に守られて
いたのに、この授業の有様は、前期の開始時期と同じく雑然としていて、しかも、
宿題をやってきた学生は3分の1にも満たないのです。まるで、ここまでの努力
が水泡に帰したかのようでした。「これじゃ、賽の河原だ」とがっかりしました
が、すぐに考え直しました。

ある意味では、こうした姿は無理からぬことだと思ったのです。夏休み明けの
最初の授業だから、いろいろ話したいことがあるだろうし、また、最初の授業は
スケジュールや評価方針などが中心で、授業は行わない先生が多いからです。ま
た、前期末のムードの高まりは、個々の学生の意欲から生まれたものではなく、
勢いで盛り上がった部分もあったからです。逆にいうと、多くの学生は、後期に
私がどうでるか仲間はどうか様子を見ていて、一番、自分が傷つかない「やる気
のない態度」を取っているのだと考えたのです。

実は、私はこうなるだろうと、ある程度、予測していました。ですから、型ど
うり期末テストの返却と解答の解説をし、全体的な成績の分布や英語を書く力の
実態を紹介したあとで、次ぎのような「振り返り」の活動をさせました。すなわ
ち、4月の最初の授業に、自己紹介の英文とこの講義への抱負を書かせたものを
収集していました。それをそれぞれに返して、4月に書いた英文と、前期のテス
トで書いた英文を比較させ、その違いについての感想と、後期の授業に掛ける思
いを用紙の背後に記述させ提出させたのです。すると、見かけの騒がしさとは対
照的に、前期の授業を肯定的に捉え、後期の授業で努力したい点を具体的に書い
た学生がほとんどで、この両方に対して否定的ないし消極的なコメントは、35
名中、3名だけでした。肯定的な意見を幾つか紹介します。

*前期に佐野先生の授業を受けて、英語の面白さがひとつ増えたと思います。外
国語としての英語をしっかり勉強していき、また、日本語でも自分の考えをしっ
かり表現できるように勉強しないと、英語の良さもわからないのではと思うよう
になりました。文章はかなり書けるようになったと思いますが、基礎的な文法の
誤りが多いので、自分の現実を捕らえた上で、実態を少しずつ改善してゆきたい
と思います。(成績B の学生)

*2つの英作文を比較すると、まず第一に、書く能力が少しずつ上がっていると
思いました。全体的な語数が2倍近くなったし、1つの英文の中でも単語数が多
く、複雑な構文が使えるようになっている。今、4月に書いた英文を見て思うの
は、同じ文法や単語を繰り返し使っていて、知っている熟語や単語を十分使いこ
なしていない、使いきれていないと思いました。まだ、今の私には100語の英
文を、ヒントなしに書くことは難しいと思うので、後期も頑張り、実力をつける
ことが先決です。やがては英語の教師になりたいので、気を引き締めて勉強しま
す。(成績A- の学生)

*初回と最終回の英作文を比較して、まず、文の内容が全く違うと思う。初回は、
ただ、知っている英文を並べているだけだが、最後の文章では、自分の伝えたい
内容がしっかりとつまった文章になっている。これは多分、カテゴリーを分けて
考えて段落をつけれるようになったことが大きいと思う。カテゴリー分けするこ
とによって、自分の伝えたいことが論理的に説明できた。さらに、単語もthink
だけではなくsuppose を使ったり、意味や深さによって単語を変えることもでき
たと思う。接続詞も最後には、いろいろな語を使って、4月のように切断された
文章ではなく、つながりを持った流れのある文章が書けている。後期は、関係詞
などもうまく使って、ピリオッドが多くならないように、なるべく一文の内容を
豊かにするように努力したい。(成績Aの学生)

*この度は、前期の単位をくださって感謝です。正直言って、私は英語は大の苦
手です。読んで訳したりするのはなんとかできるのですが、いざ、声に出してス
ピーチしたり、短時間で100語もの英文を書くというのは、私には苦痛でなり
ませんでした。何度も先生と言い争いをしましたね。今思えば、恥ずかしい思い
です。すみません。でも、はじめての頃に比べると、やはり英語力がついている
気がします。何よりも、前期の期末テストで、120語もの文章を書くことがで
きたのは、私にとってすばらしい快挙です。これも先生のおかげだと思います。
追伸:最近はNHKの「英語でしゃべらないと」という番組をよく見ています。後
期も頑張るぞ!(成績B-の学生)

これは記名式なので、教師に批判的なことは書きにくいという点を指し引いて
考える必要はありますが、大勢は前期の授業の進め方を肯定的に捉え、後期に関
しても前向きな姿勢を持っていることが伺えます。特に、興味深いのは最後のコ
メントで、この学生は第6回で紹介した、私の授業を最も厳しく批判した学生の
ものです。私への「おべっか」と読めなくもありませんが、彼の授業態度の変化
などから、私は本音が出ているのだと思います。ただ、彼が英語を苦手と考えて
いることには変わりません。後期は、こうした「やる気があるが英語が苦手な学
生」と「A やA- の力もある学生」を同時に伸ばして、かつ、クラス全体の到達
目標を達成する具体的な方法はどのようにするかを探ります。

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長崎政浩  "You never really lose until you quit trying."
高知県教育委員会事務局 高等学校課 チーフ(学校教育担当)
780-0850 高知市丸の内1-7-53  【TEL】088-821-4907
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7/27/2007

AR Navigator 2007 No.16 佐野先生のミニ・レクチャー(8)

「前期の期末テストの結果から見えてきたこと」

 前期の期末テストでは、前号で予告したように、教科書やワークブックからは
言語形式に焦点化した時制を考えて動詞の原型を書き直す問題、前置詞や熟語表
現などの穴埋め問題、語順問題なども出しましたが、メーンは次ぎの課題でした。
 
「質問をヒントに、出だしの文に続けて、ペン・パルBillに帝京大学や大学生活
を説明する100語以上のまとまりのある英文を書きなさい。特に、パラグラフの
形、語順、動詞の時制に気をつけ、再度見直しなさい。最後に語数を数えて、記
入すること」

1) Where is the university?
2) How far is it from JR Tokyo Station?
3) How is the climate?
4) Which season is the best there?
5) What are good things about the university?
6) How do you spend a day there?
7) What are you going to send him for his birthday present? Why?

Dear Bill;
Today I'm going to tell you about my university, Department of
Education, Teikyo
University.

テスト時間は1時間ですが、大部分の学生は言語形式の問題は20分程度で終え
ていたので、約40分を掛けて英作文に取り組んだことになります。自己紹介と
か故郷紹介とか、気候とか、贈り物などのテーマは授業で扱っていますが、「大
学紹介」は新しい課題ですから、書き上げるには時間が掛かったようで、時間前
に提出した者は37名中2名だけでした。それだけ、熱心に取り組んだともいえ
ます。辞書は使用可ですが、教科書などは参照できません。英作文を採点し、結
果を数値的にまとめると次ぎのようになります。

・総合的評定      A- 7 名  B(B+, B-) 26名  C(C-) 4 名
・語数     最高 175 語  最低 49 語  平均語数 109 語
・global errorの数   最高 0 最悪  9 平均 2.4
・パラグラフの形    出来ている者 34 名  出来ていない者 3 名 

この結果を、到達目標に設定した「教師の与えた英文の質問をヒントにし、辞書
の使用を許せば、身近な話題について100語程度のまとまりのある英文を、
global errors は1個以内に押さえて、書くことができる」を基準に評価すると、

1) 語数に関しては十分満足がゆく結果である。また、書かれている内容も、質
問を手がかりにしながらも、自分の感想や意見が書かれていて、興味深いものが
多い。

2) 「まとまりのある英文」は、前期は内容的なパラグラフの構成よりは、形式
的な面だけを強調したのだが、その点では9割の学生が目標を達成している。

3) global errors に関しては、目標の設定自体がやや無理があったようだ。
Global errors

は全然ないという学生は3名しかおらず、A- のランクの学生の半数以上が1
個のエラーを犯している。質問に正しく答えることができない学生が多いのだか
ら、この結果は当然である。また、前期は指導の時間が十分ではなかった。正確
さをどのように高めるかが後期の課題である。以上が到達目標からの評価だが、
他に注目すべき点は、

4) 筆記テストの前日に実施した音読テストは、全員が真剣に取り組み、教師の
評価に満足せず、再度挑戦する者も数名いた。この場合も、テスト終了時点で、
Aと評価された学生に全体の前で音読させ、どの程度の読みが期待されているの
かを示した。

5) 私が最も力を注いだ英語学習への意欲づけは、この段階では成功している。
アンケートをとる時間がなかったが、音読や筆記テストの様子から判断すると、
英語学習に興味を持ち始めている学生が増えている。後期に、どう維持するかが
課題だが、その一つの方策として、夏休みの宿題にスピーチ(150 語の長さ)を
書き、最初の授業時間に発表させるので、暗記してくるようにと指示した。一方
で、英語検定や教科書の自学を薦め、実績を示した者は成績に反映すると告げて
ある。自学の習慣を育てる(と言っても限られた学生になるだろうが)ことも後
期の課題としたい。

 最後に、A-の評価を受けた学生の作品を紹介する。(誤りはまま。赤字は
global error)。
 
Dear Bill,
Today I'm going to tell you about my university, Faculty of
Education, Teikyo Univ.
My university is at Hachioji City in Tokyo. It takes two hours from
Tokyo Station by train. And, if you want to come here, you must get on
and off the train many times. It is difficult for you to come here.
But the university is a good place.
On you way to my university, you can see the mountain. The mountain
called Japanese people Mt. Takao. I like the mountain, because it is
very beautiful. As you can see, there are many flowers in the mountain.
By the way, do you like Japanese movie? My university appeared the
movie "Death
Note". How is your university? I want to hear. I'd like to
correspond with you.
     Your friend, Y. T.
     
この学生は、最初の授業で書かせた自己紹介では次ぎの英文を書いている。

 My name is Y. T. I'm from Ibaraki. I live in Horinouchi in Tokyo.
My favorite music is all. Especially I love Ray's music. And I love
basketball. So I belonged to basketball club until high school. I love
blue, because I like the sky and sea very much.

いずれも質問を与えているので、内容がそれによって制限されるところがある
のは事実だが、3ケ月後の前期のテストでは、教師の質問から発展して、より豊
かな表現を意図するようになった点は読み取れるだろう。もっとも、この学生の
自己紹介の作文は、最も上手く書かれていた作品だから、大部分の学生はより大
きな変化を見せているものてと期待できる。やってきた方向は、大筋では間違っ
ていなかった。

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☆英語教員指導力向上研修メーリングリスト
"You never really lose until you quit trying."

【授業改善プロジェクト担当】高等学校課 長崎政浩
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7/23/2007

AR Navigator 2007 No.15 夏期集中研修のイメージ

皆様へ

いよいよ夏本番という感じになってきました。

 8月6日から始まる夏期集中研修ですが、どのような1週間になるか、大体のイメージをつかんでおいていただくと、参加しやすくなると思いますし、必要な準備も的確にできると思いますので、アクションリサーチに関する部分についてお知らせします。

(1)ポートフォリオ提出

 まず、初日にはポートフォリオの提出があります。研究協議の中で使用しますので、1日目の終了後に提出していただきます。提出いただいたポートフォリオは各メンターが、

 「必要な課題がそろっているか」

という点を中心に点検いたします。同時に、仮説設定までのプロセスがうまくいっているかという点にも注意を払いたいと思います。

ポートフォリオは7日に返却します。

 【お願い】自己点検欄を設けてありますので、提出前に点検を

(2)研究協議1〜3

6,8,9日の3日間は、それぞれ1時間づつの研究協議があります。3名のプロジェクト班で行います。1日1人が発表者となって、前半の取り組みについて、話し合います。発表者以外の皆さんは、ぜひ積極的に意見を述べてあげてください。リサーチの質の向上には絶対に必要ですから。

(3)事例研究

最終日の10日には、中学校1本、高校1本の事例研究を行います。事例発表自体の時間は10分間です。事例発表のあと、グループ協議を行い、最後に、佐野先生から助言をいただきます。

【お願い】ポートフォリオ点検後、中高それぞれ1名の先生に事例発表をお願いしますので、「笑顔で」お引き受けいただければ幸いです。

(4)講演

1週間の協議と事例研究を受けて、佐野先生からご講演をいただきます。きっと、9月からのリサーチの参考になると思います。


それでは、あと約2週間。これまでの取り組みをじっくり振り返っておいてください。

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AR Navigator 2007 No.14 佐野先生のミニ・レクチャー(7)

      「これまでの話しをまとめると。 また、こんなことができるかも。」

 通常のアクション・リサーチでは、新学期のできるだけ早い時期に生徒の実態をアンケートやテストで調べて対策をたてることになっていましたが、今回は、本格的なリサーチはつい2,3週間前に始まったばかりでした。どうしたのだろうと、疑問を感じておられる方もいるでしょう。実際のところ、これまでの実践は、リサーチというよりも、その基礎作りでした。具体的には、(1)
教師が自己紹介をかねて、授業にかける思いを語る。(2)
学生同士の交流を多くして、クラスのムード作りを図る。(3)授業の定型的なパタンになれさせる。(4)クラスのルールの確立を図るということでした。
こうしたことを通して、結局は、学生の希望も入れながら、共同の目標を設定することがねらいだったのです。また、その過程で、このグループの持つ長所や、弱い点、今後の方針なども探っていたのです。

 ですから、ここまでの動きをアクション・リサーチのフォマットで言えば、クラスの特徴、観察と省察、アンケート調査による実態把握、宿題や授業中の課題による英語力の把握に向けられていました。なぜ、このことにこれだけ時間を掛けたかというと、研修に参加した皆さんのリサーチにペースを合わせようとしたということがあります。研修では、夏休み前までに、実態の把握とリサーチ・クエスチョンの設定までもってくることになっていましたので、ヒントを提供するために、いつもの年よりは、実際の取り掛かりを遅らせたのです。通常であれば、夏休み前に仮説の第1ラウンドは終了しています。

 だが、それだけが理由ではありません。仕掛け(仮説の設定と実践)を遅らせても、クラスのムード作りにより多くの時間を掛けたらどうなるか、自分なりの興味もあったからです。これまでのミニ・レクチャーを読んでいただければ分かると思いますが、「動機を高めるには、準備段階になにが必要か」という問題をリサーチをしていたのです。いろいろな問題が未解決ですが、大筋では、狙いは達成されたようです。前期のテストが近いこともあって、出席率も8-9割、授業参加も積極的な者が出席者の7-8割程度ですから、これまでのクラスに比較すれば「気持ちが悪いくらい」に前向きです。例の厳しい批判をした学生も、肩たたき戦術(名前を思い出しておいて、授業前にひとことふたこと、誉めることばを言ってやる)が功を奏したのか、かなり積極的に授業に参加してくれています。もっとも、今週実施した音読テストは、教師の前で教科書を読まなければならないので、「にらまれてはまずい」という計算もあったことでしょう。

 ただ、書くことの力の伸びは、来週の期末テストの結果を見ないと分かりませんが、あまり大きくはないと思います。それでも、テストは予定どうり、教科書やワークブックからは言語形式に焦点化した、選択問題、並べ変え、書き直しなどだけを出し、中心は疑問文をそれを手がかりに、200語以上の英文を書くことにします。これまで、自己紹介や故郷紹介、好きな人への送りものなどのテーマを扱っているので、海外のペン・パルに帝京大学(位置、気候、季節ごとの売り、気にいっている点など)や、自分の学校生活などを紹介し、相手の誕生日の贈る送り物を説明する英文を書くことを出す予定です。話題は新しいですが、既習の表現で対応できるはずです。このテスト結果を基に、後記は疑問文で出すヒントをやめて、内容自体を学生に考えさせるようにし、疑問文でヒントを出した場合と大差のない、まとまりのある英文を書けることを目標にしてゆくつもりです。

 心配もあります。せっかくのクラスの盛り上がりが、2ケ月後の後期に持続することは考えられません。方策を考える必要を感じています。また、後期からの実践の仮説に関しても考える必要があります。これについては、前期の最終部分で、多少始めてみて効果がありそうだという感触を得ています。具体例を幾つか紹介すると、

(1) 中学校1年生の文型を疑問文にして、60個ほど選び、応対の仕方も一覧表にして手渡します。ペアを組ませて教師が読み上げる疑問文に素早く答えたほうを勝ちとして、5問で勝負をつけさせ、勝ちは勝ち組で、負けは負けでペアを作らせて、再び競わせ、何回も繰り返します。ここまでしか前期はできませんでしたが、後期はペアで質問も競わせる。その後、2年生、3年生の文型でも同じように実施することを考えています。

(2) この活動ができるようになったら、who, which, where, when, how, how far, how much,
why, etc,の疑問詞を板書するか、カードに書いておいて、教師のいう簡単な文について、上記の疑問詞を使った疑問文をできるだけ沢山、かつ素早く言えるゲームを考えています。例を挙げると、教師がI
play baseball.と基になる文を言ったら、
 Where do you play baseball? How often do you play it? With whom do
you play it?
など、ペアで素早く疑問文にできたほうが勝ちというゲームを考えています。

(3)理由や説明を考える頭の働きを活発化してもらうために、学生に言い逃れの言葉を考えさせる練習もしたいと考えています。これも最初の文を学生に考えさせると時間がとるので、教師が、たとえば、I
don't like English. という基になる文を言い、ペアの一人がそれを繰り返します。すると、すかさず、相手がWhy don't
you like English? と質問します。適当な理由を考えて、Well, I can't learn English
grammar. と答えます。すると相手は必ず、それに反論して、Oh, no. English grammar isn't
difficult at all. All you have to do is practice. というような流れを考えています。

 こうした活動は、学生が疑問文を作ることを苦手としていること、疑問文を作ることが発想を豊かにする練習になるのではないかと考えているからです。また、Why,
because の疑問文のやりとりが、やがてはdebate に発展できるのではないかとも思っています。実は
まだ、他にもいろいろアイデアはあるのですが、今日はここまで。

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7/16/2007

AR Navigator 2007 No.13 佐野先生のミニ・レクチャー(6)

   「数量的なデーターはどうしたのか」

 前回のレクチャーでは、アンケートの結果だけから目標の設定をしたように書きましたが、実は、そうではありません。これまでの宿題として出している質問をもとにした自由英作文の結果から、学生の「書く能力」を数量的にも把握していました。一般に、英作文の能力を見るには、(1)
内容的な豊かさ、(2)パラグラフの構成、(3)語彙の適切さ、(4) 文法的な正確さ、(5)
スペルや句読点の正確さの5点から判断します。ですから、数量的な調査ではこの視点に対応するデーターを集めるのですが、私の授業の場合は、そのそれぞれについて、かなり甘い基準を設定しています。

まず、 (1) の内容については、質問を与えてヒントを出しているので、もっぱら質問を利用して、どれだけ沢山英文を書いたかという総語数を手がかりとして判断しています。ですから、内容的なユニークさは、特に求めません。(2)
については、パラグラフの内容的なまとまりよりは、パラグラフとしての形式、すなわち、文章が幾つかのパラグラフでできていて、パラグラフの冒頭はindentしていればよしとします。(3)
については、意味の通る語であれば、多少不自然で、適切さに問題はあっても可とします。(4) の文法的な誤りは、意味の誤解を生むglobal
errors は減点を多くし、誤解を生まないlocal errors( 冠詞や複数形、前置詞など)
は指摘はしますが、評価の際には軽く見ます。(5)
では、スペルや句読点のほかに、文の途中で意味もなく大文字にすることはしないように注意しています。

調査の方法ですが、まず、授業中にヒントとなる質問文を与え、対話練習をさせたテーマについて、100
語の英文を書くことを宿題とし、次時に提出させます。それに目を通し、3段階(A, B, C) に評価して戻しています。そのそれぞれに+
/ーがつく(たとえば、A- とかC+)
のでかなり細分化された評価になりますが、実際は、上記の視点を頭に入れた、印象的、総括的な評価をしています。数量的なデーターは、戻した英作文に関して、学生の個々に自分の作品について計算させます。まず、総語数を数えさせ、次に文の数を数えさせ、総語数を文の数で割って一文の平均語数を計算させます。次ぎに、教師の赤線の入っていない文(=誤りのない文)を数えさせ、それを全体の文の数で割って、文法的な正確さや語彙の正確さを算出させます。スペルなどでも同様です。本来なら、教師が自分でチェックしたほうが正確さは増すのは当然ですが、そこまでする時間はありません。さらに、学生にも、自分の英作文の実態を知り、改善の方向を探るチャンスになると考えて学生に数えさせ、報告させています。ですから、数値的には、正確さに欠けることは否定できません。ただ、それまでに英作文の評価はすでについているので、数値を水増しして報告しても利益はないので、かなり信頼してよい数値のはずです。以下が概略です。

*宿題にして書かせた場合
  総語数の平均90 語 (最高139語−最低55 語)
  1文の平均語数 7.8語 (最高12 語−最低6. 5)
  パラグラフの構成(形式)が出来ている者 約6割
  誤りのない文が全体で占める割合 43% (最高81% —最低15%)

*授業時間中に15分の時間内で書かせた場合(対話練習後にテストとして実施した)
  総語数の平均 81 語 (最高160語—最低43 語)
  1 文の平均語数 7.1語(最高12.5- 最低6.0)
  パラグラフの構成(形式)が出来ている者 約5割
  誤りのない文が全体で占める割合 40% (最高65% - 最低15%)

以上、2つの数量的な調査結果は類似していていることがわかります。すなわち、時間が多くても15 分と制限した場合でも、学生が書ける英文は90
から80 語程度、パラグラフの構成を意識している者は約5から6割、誤りのない文は(この調査ではglobal errors とlocal
errors の両方を含んでいる)は約4割だが、global errors
に限定すれば、6割り程度に上昇することが分かりました。一方、一文中の平均的な語数(これは学習者が自動的に操作できる構文の複雑さを示すと考えられています)は、教師が質問で書く文のヒントを与えている現状では、前期の調査では除外して考えることにしました。すると、今後の指導目標は、語数を増やすこと、パラグラフへの意識を強化すること、さらには、global
errorsの誤りを減らすことを中心に指導を計画することになります。こうした数量的な調査を踏まえて、また、学生へのアンケート結果から、「前期の到達目標:教師の与えた英文の質問をヒントにし、辞書の使用も許せば、身近な話題について100語程度のまとまりのある英文を、global
errors は1け以内に押さえて、書くことができる」と設定したのです。もちろん、この目標を学生の全員が達成することを願いたいですが、能力差の大きなクラスでは、それは不可能です。7割から8割の学生が上記の目標を、期末テストで出す英作文(教師が与える質問をヒントにする)で達成することを期待することになります。また、落ちこぼれる学生には、いわゆるセーフテイネットを用意して、やる気さえあれば、単位が取れる保証をしてやることも必要ですが、この点はすでに前回で述べました。

ただ、総語数が40 語代の学生3、4名は、明らかにこうした授業の進め方にはついてこれない者たちです。彼らは教師が出す英語の質問に答えることさえできないのです。一機に救う方策はありませんが、もう少し、いろいろな形の疑問文に答える練習を与えてやる必要があるし、それが他の学生にもより素早く英文の構成を考えて書く「英語脳」の育成には効果がありそうです。次回は、ここまでの事前調査の方法をまとめて説明し、問題解決のための対策(仮説)についても考えてみましょう。

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6/29/2007

AR Navigator 2007 No.12 佐野先生のミニ・レクチャー(5)

         アンケート結果をどう読み、どう利用するか。

前回のミニ・レクチャーで私の授業のアンケート結果の概略を紹介しましたが、紙面の関係もあって、結果をどのように解釈し、それをどのように授業目標の設定やリサーチ・クエスチョンに生かしていったらよいか、くわしく説明できませんでした。実際、アンケートの結果が、自分が期待していたよりも悪かった場合に、その結果にショックを受けて怖気づいてしまい、授業改善の意欲を失うことはよくあることです。私の今回のアンケート結果も、私が予期してよりも、厳しい否定的なコメントがいくつかありました。

この場合、まず、注意しなければならないことは、適切な距離をおいて、アンケートの結果に対応することです。私の場合だと、否定的なコメントの数は予想した程度でしたが、最後で紹介したコメントは「先生は生徒の実態を正しく認識していない。力のない生徒を見捨てているのではないか」という厳しいものでした。このような場合にどのように対応したらよいのかを考えてみたいと思います。これは教師だけでなく、コメントを書いた生徒や、類似した考えを密かに持っている生徒に大きな意味を持っているのですから、十分、注意して対応することが必要です。以下、私が次ぎの授業時間にアンケート結果をどのように利用し、目標決定につないでいったかをお知らせします。

まず、正直に全体的な傾向を知らせました。授業の目標については賛成するものが約
5分の3、反対が5分の1、どちらともいえない(コメントなし)が5分の1だったこと、
また、授業の進度、宿題、文法説明などに関しての要望が多かったと伝えました。次ぎに、名前を伏せて、肯定的なコメントから何枚かを選び(8ケだった)、そのまま読みました。その後、否定的なコメントもいくつか(4つ)もそのまま読みました。この時に、肯定と否定のバランスが大切です。教師は「正直であろう」とするあまり、否定的なコメントを多く紹介しがちですが、これでは全体の姿が伝わらないので、肯定的なもの3に対して、否定的なものが1になる程度の数を選ぶことが大切です。ただ、後者に対しては、「否定的なコメントを教師にするには勇気がいるものだ。それをきちんと伝えてくれたことに感謝したい」と、まず、誉めます。特に、最後の厳しいコメントに関しては、「これだけ、論理的に意見を書けるのは、考える力のある証拠だ」と認めます。ただ、否定的なコメントには、「クラスの全員がとか、多くが・・・」と書いているけども、それは3分の1に満たない、すなわち、別の考えの人が多いことに注意させます。その上で、「ここが重要なのだが・・」と注意を引き付けておいて、次ぎのように言います。

 「この否定的なコメントをしてくれた人たちは、良い英語授業は、先生が分かりやすく文法を説明し、練習の解答に時間をかけ、和文英訳の答えも黒板に書くことだと考えているようだ。だが、こうした授業は君たちが中学校や高校で体験したものではなかったのか。それによって、本当に君たちの英語力はついたか。英語が話せるようになったか。書けるようになったか。こうした授業の進めかたは、良い点もあるが、悪い点もある。悪い点は、英語の勉強も他の教科の勉強と同じように、「理解すればよい」と思わせることだ。だが、英語の勉強は、実は「文法や単語を理解する」レベルで終わっていては、絶対に「使えるレベル」には到達しない。そのレベルになるには、人に教えてもらって分かるのではなく、自分で失敗し、その失敗の中から間違い見つけ、正しい形で自分で覚えてゆくことが大切なのだ。人によって、間違う場所も違うし、それを正しく覚える方法も違う。だが、英語の勉強は、英語を使うことがスタートだ。この授業では、それを友達との会話や英語を書くことで多くしようとしている。だから、この時に、自分の英語力の不足しているところは自分でカバーし、先生に訂正してもらった英文の誤りは、なぜ、それが誤りなのかを調べ、分からないときには先生に尋ね、暗記し、自分の力に変えてゆかなければならない。結局、自分の英語力には、自分で責任を持て」と強く説得します。

 その後、出された質問に答えます。「予習の仕方が分からない。どういう力が求められているかわからい、という質問があった。それは、教科書やワークブックの問題をやることが予習だと考えているからだ。そうではなく、教師が宿題として出している英文とその答えを暗記し、見ないで友達と会話できるように準備してくることが最も大切な予習だ。次ぎは、その会話をもとに行う英作文を、できるだけ長く書いてきて、先生に訂正してもらったら、その誤りから自分の英語力の不足を見つけ、それを補充する練習をすることだ。だから、教科書やワークブックは、あくまでも、君たちの英語力を補充するためのものだから、期末テストでも軽く扱うことになる」と説明します。

 次ぎに、生徒から出された進度とか、文法の説明とか、和文英訳の要望について、上に述べた基本路線に合致する限り、できるだけそうように努力するので、いつでも意見があったら知らせ欲しいと説明します。その他に、この機会を捕らえて、これまで徹底していなかったクラスのルールの注意もします。たとえば、ペアやグループ活動に参加しない生徒は、この授業の妨害になるので、みんなと協力して欲しいし、そのことによって、自分の英語力も伸びるはずである。また、どうしてもこうした英語授業に不安のある者は、その不安な点、学習した点を毎時間ノートに書いて貯めておき、期末テスト後に提出すれば、単位の認定に考慮する、などの点です。そして、最後に、全員にノートを出させて、
 「授業の最終合意目標:前期は身近な話題について、教師の出す英文の質問をヒントに辞書を使用すれば、100語程度のパラグラフの構成のできた英文を、global
errors 葉」1個以下で書くことができる」と書き取らせ、目標設定にします。

 このように、アンケート調査は結果を公表し、それについて生徒と話しあうことによって、彼らの学習に対する誤解を解き、また、クラスの目標設定のきっかけとするのです。

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6/22/2007

AR Navigator 2007 No.11  佐野先生のミニレクチャー(4)

「やっぱり。やってみなきゃ分からないよ!」

 前回のメールを読まれた方は、私の一般教養の英語の授業は、順風
満帆で進んでいるなという印象を持たれたと思います。実は、私も、
「ほぼ、7割の学生は僕の授業に、おおむね満足している」と思って
いました。ただ、授業の最終到達目標を定め、リサーチ・クエスチョ
ンを設定するには、学生が現在の授業をどう受け止めているのか実態
の把握が必要です。ところが、授業が予定より遅れてしまって、アン
ケートのために時間を特別に確保することができません。そこで、授
業の一部に入れ込みました。具体的には、授業の最後の自由英作文
(「私の好きな場所」というテーマで与えておいた質問に答え、10
0語程度のまとまりのある英文を書くという課題)の用紙のうしろに、
「これまでのこの授業の目標や、進め方について、自由に感想を書き
なさい」と指示して書かせたのです。ですから、アンケートは記名で、
当然、教師側に都合のよい回答が多くなる可能性があります。以下、
その結果の概略です。

出席者数 34 名(在籍 38名)

・授業目標:
好意的な者 21名。  どちらとも 8名  否定的な者 5名

・授業の進め方
好意的な者 8 名。  要望あり  18 名  否定的な者 8名

結局は、授業の目標はいいが、進め方には注文があるということです。

○目標設定に関して好意的なコメント

*いろいろな人と会話しながら授業するので最初はとても緊張してしまい
ますが、クラスの雰囲気はとてもよいと思います。宿題と予習が多くて大
変ですが、がんばります。

*毎回、友達と英会話するので、だんだん自分の英語の発音は上手くなっ
ているかなと思う。対話すると、みんなスラスラ読める気がする。ただ、
教科書の問題の答えあわせが、少しはやいので、もう少しゆっくりとやっ
てほしい。教科書の音読は、前よりゆっくりで、何回もやっているので、
いいと思います。

*とても楽しい。英語力がついてきている気がする。でも、やる気のない
やつとこの授業  をやっても面白くない。どうにかして欲しい。ペアで
やったりする会話は、すごく身についている。また、宿題の頻度、量とも
に少々きついが、丁度よい気もする。

*毎週の授業を楽しみにしています。普段、英語を上手く話そうとすると、
笑われたりするので、恥ずかしくてできませんでした。毎日の会話の活動で、
それがなくなりました。最近は、毎日のできごとを英語で話すように心がけ
ています。

*話す機会のない人と話しができたし、コミュニケーションがとれていいと
思う。友達も増えた。また、授業では書くことだけでなく、口にすることで
ずいぶん上達できると思う。これまでの先生は、文法や書くことばかりだか
ら、先生のクラスになれてよかった。

*この授業は音読する時間が多くて、発音することが苦手な私にとってとて
も助かります。

また、席を移動することで、いろんな人と話せて楽しいです。知らない人
と話すのは緊張するし、失敗したくないので、家で少し読む予習をします。
なので予習した日はスムーズに読めます。これからも予習を続けたいです。
また、この授業は少し進み方が早いですが、そのほうが時間が短く感じる
し集中できます。

○否定的なコメント

*この授業は目標のレベルが高い気がします。私は英語がとても苦手なので、
正直いってついていけない気がします。発音もいきなり駄目と言われてしまう
ととてもついていけないと感じてしまいます。もっと初歩的なところからやっ
て欲しいと感じています。話すこともとても大事だと思います。だけど、ずっ
と話しているだけではあきてしまうので、もっとテープを聞くとか、いろいろ
なことがやりたいです。ただ、これからも頑張っていきたいと思います。

*1年の授業に比べて、レベルが高く、戸惑っている人が多いように思う。も
う少し丁寧に文法とかも説明して教えてください。もっとやさしくするか、ゆ
っくり進めるかしていただきたい。

*この授業のテンポがつかめません。英語のスピードを上げるために、展開を
早くするという理由で進めているようですが、大部分の生徒は授業を理解でき
ていないと思います。

授業の大部分が100語の英文レポートを書くという目標に向けられていま
すが、もともとその力のない生徒はどうすればよいのですか。どのように英語
のレベルアップを図ればよいのですか。自習が大切だというならば、その自習
の仕方をちゃんと説明して欲しい。結局、個々の生徒に基礎的な実力がなけれ
ば、この授業は意味がないと思います。


○結果をどう読み、どう利用するか

アンケート結果は、私が予想していたよりも厳しいものでした。ただ、上に
「否定的なコメント」を書いた学生の文を読めば分かるように、彼らは英語授
業自体を否定しているのではありません。自分の英語授業への期待や能力にそ
ぐわない授業を私が展開していることを批判しているのです。このコメントに
は、私の意図を十分理解していなかったり、また、彼らの英語授業への思い込
みから発している部分もあります。

ですから、まず、次ぎの授業には、自分の考え方が全体の中でどのような位置
にあるのかを気づかせるために、両方のコメントをいくつか紹介します。次ぎ
に、目標については支持されているのでこのまま継続する、ただ、進め方につ
いては、要望が多かった文法や音読指導をもう少し丁寧に進める、自習の仕方
について解説する、テープや教師の話す英語を聞く時間を多くするなどを約束
します。また、同時に、自分の英語力は自分で伸ばす意欲が大切で、文法ルー
ルを教えてもらって理解するのではなく、使いながら、誤りからルールを見つ
け、身に附けることが大切だと力説します。

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☆英語教員指導力向上研修メーリングリスト
"You never really lose until you quit trying."
【研修HP】http://www.kochinet.ed.jp/center/kyouka/kochieigo/index.htm

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6/19/2007

AR Navigator 2007 No.10 仮説設定のヒント2 インプットの周辺

 アウトプットは、インプットなしにはありえません。聞いたことも、見たこともないことを、理解したり、言ったりできる可能性はないのです。モンゴル語を聞いたことも、見たことものない私には、モンゴル語を理解することも、モンゴル語で意見を述べることもできません。英語が分かる、英語を使えるようになるためには、そのためのインプットが必要であるということです。

 インプットのうち、記憶に蓄えられアウトプットとして利用可能なものをインテイク(intake)と呼ぶことがあります。英文の構造や語彙が、学習者の頭の中にインテイクとして残ることが、英語力が定着した状態と考えるわけです。英語を理解するうえでも、インテイクは重要です。英文の構造や語彙が頭に入っていれば、英文を読んだり、聞いた時に、瞬時に理解できるようになるはずです。

このことから、言えるのは、

(1)土台となるインプットを与えることが大前提である。
(2)インプットをインテイクとして取り込む活動が定着の基礎となる。
(3)インテイクを活用して、アウトプットする活動を行うことで実践的
  コミュニケーション能力が育つ。

のではないかということです。

 さて、ここで仮説設定の話です。(1)〜(3)のどの部分が、皆さんの教室に必要だと思いますか?そして、どのような仮説が考えられるでしょうか:

(1)の場合

○「日本語による文法や語彙の説明中心のインプットしか与えてないなあ。簡単な英語(teacher
talk)で教科書の内容を説明し、インプットを与えてみたらどうだろうか。」

○「そもそも、インプットが必要という発想がなかった。どうすれば、良いインプットを与えられるだろう。chunkに区切って、区切りごとに内容をとっていくようなインプットを繰り返すのはどうかなあ。」

○「基礎的な単語すらあやしい状態。まずは、必要な語彙のインプットから始める必要がありそう。」

(2)の場合

○「分かり易い説明は心がけているし、生徒にも評判はいいけど、英語力が定着しない。もっと、基礎を定着させるためのドリル的な活動が必要かも。」

○「内容理解までは完璧にやってるけど、音読は1回しかやってなかった。やっぱ音読が不十分かなあ。しっかりと定着するまで音読とシャドーイングをやってみようか。」

(3)の場合

○「意欲も高いし、簡単なやりとりはできるようになってきた。でも、使う英語の質がまだまだ。英語を話す時の、内容が不十分そうなので、mappingを使って練習させてみようか。」

○「とても、活発なクラスで、英語を話すのも好き。生徒が英語を使う機会をもっと増やした方がよさそうなので、教師が説明する時間を減らして、生徒の活動時間を今より30%増やしてみようか。」

などなど。。。


 皆さんが、教室で実現したいことは、何ですか?どのような力を身につけさせたいですか?まず、生徒の願いや先生の思い、教室の現状をみて、もっとも効果的な仮説を考えてみてください。

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6/17/2007

AR Navigator 2007 No.9 仮説設定のヒント

皆様へ

アクションリサーチ宣言はされましたか?これまでの時期、事前調査やリサーチクエスチョンの設定など、たくさんやることがあったと思いますが、一番大事なのは、これです。今年1年目指すこと、達成したいこと、先生が授業改善に取り組むことなど、率直にかつ真摯に自己開示をすることから始めてください。

さて、仮説設定。最大の難関です。夏期集中研修まで、じっくりと取り組んでください。

まず、第一のポイントは仮説1に達成が容易な項目を設定することです。割と変化が見えやすいものを設定して、それをクリアーすることです。仮説1の成功体験が、教員にとっても生徒にとっても、その後の弾みになるようです。授業の環境づくりや生徒との人間関係づくりなど、先生にとって、「元気のでる」ような仮説をおくと良いのではないでしょうか。「1分間のteacher
talkでクラスを英語環境にまきこめば、生徒の参加意欲が高まるのではないか。」とか「教科書に入る前に、簡単なシャドーイングテストをやれば、授業の達成感が高まるのではないか」などなど。そして、授業評価で「参加意欲」を聞いてみてください。きっと変化が実感できるはず。

オリエンテーションで、自分自身の得意な分野をあげてもらいました。自信と確信をもって授業に入っていける活動で、まずは、良い第一歩を踏み出しましょう。

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6/15/2007

AR Navigator 2007 No.8  質問への回答(続き)

 提出していただいた質問への回答「続編」です。

 いただいた質問の大半は「リサーチに対する不安」でした。それ以外は、それぞれの個別のものでしたので、それぞれにお答えします。

○データの取り方が分からない。

 データの取り方は、実に様々あり、リサーチの中身によっても変わります。アカデミックな研究ほどには客観性を意識する必要はありません。日常の授業の中で、生徒の英語力向上に役に立つ方法で、データを集めてください。分かりやすいのは、年度当初とリサーチ実施後に共通性のあるデータをとるという方法です。音読を録音しておいたり、英作文を書かせておいて、同じことを検証の時にもやってみる。そうすることで、変化がつかみやすくなると思います。

○テストが不安!

 2回受験するCASECのことだと思われます。このテストは、あくまで自己診断が目的ですので、結果が悪かったとしても、ペナルティがあったりとか、給料が下がったり(笑)などということはまったくありません。皆さんに、現在の力を把握していただき、それをもとに自分自身の英語力向上のプランをつくっていただきたいというのが趣旨です。2回目は、各学校で受験していただきますが、その受験報告書にも点数の記入欄はありません。「テストの結果をうけて、ご自身がどうするか。」それだけです。私たちは、お互い、大人であり、プロの教師です。これ以上、何が必要でしょうか?

○TTの授業でも良いか?

 もちろんです。これがだめ、あれがだめといったものはありません。あるとしたら、授業者には手に置おえない問題は扱えないということです。「週3時間しか英語の授業がないので、1日を36時間に変えよう」のようなことは、無理なわけです。しかし、「25分授業を週6回に分けて実施してみよう」ということなら、できるわけです。

○通信制で授業時数や面談回数が少なく十分なフィードバックが得られない。

 可能な範囲でのデータ収集でかまいません。アクション・リサーチは、「授業優先」です。リサーチのために授業の方が犠牲になるのは本末転倒です。今の現状の中で、できるかぎりのリサーチをすることが大切です。

○34年次サポートのテーマと重複しても良いですか?

 県立は3・4年次サポートでもアクションリサーチをやっています。1つのリサーチで十分です。この英語研修でしっかりとしたリサーチをやっていただいて、それを34年次サポートの方に生かしてください。

○多忙な中で研修に集中することが難しい。

「授業」に集中してください。それが、この研修です。

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6/12/2007

AR Navigator 2007 No.7 佐野先生のミニ・レクチャー(3)

佐野先生のミニ・レクチャー(3)

    これまでの実践を振り返り、事前調査にとりかかろう

 しばらくメールを出しませんでしたが、その後、授業はどうですか。私の一般教養の授業は、今年はかなり順調にすすんでいて、一応、以下のことは達成できたようです。

(1) 教師が自分の授業に対する思いを語り、体験から勉強の仕方を話す。

このことはかなり上手く行き、かなりの学生が、私が英語苦手人間からどう脱却したかという話しに興味を持ったようで、何人かが英語学習に関してのアドバイスを求めてきています。たとえば、「準2級に合格したが、2級を目指す勉強はどうすればよいか」とか、「将来、留学を考えていて、会話力を伸ばしたいのだが、どうしたらよいか」などです。前者に対しては、準2級のテストの成績を聞くとぎりぎりの合格だったので、もっと準2級の過去問題をやり、8割か9割の正解が得られるようになってから、2級の問題集をやるように忠告しました。後者に関しては、英会話学校にゆくのも悪くはないが、それ以上に、現在使用している教科書のまとまりのある例文を完全に暗記し、文法も語彙も正確に使えるように、徹底的に自己表現の練習をすることとアドバイスしています。

(2) 授業の目標に合意が得られつつあるか。

 この点に関しては、授業の最初に、「この授業では、身近な話題について、できるだけ沢山、しかも素早く書けるようにする」と目標は伝えてあります。また、2週間後に学生の授業に対する意欲や要望を尋ねるアンケートを実施し、そこで多くの学生が「話せるようになりたい」と書いたことを紹介し、「話すこと」「書くこと」を結びつけて指導するという方針を伝えました。ですから、自己紹介の文や故郷紹介の英文を書かせたら、それにポジテブなコメントを出して、興味付けをすると同時に、スピーチにして友達に発表する形をとり、聞き手も相槌や、コメントや質問をするように励ましています。

(3) 授業の進め方に定型のパタンができつつあるか。

 まず、宿題にしておいた例文を用いて、ペアを変えながら、会話をすることから始まります。たとえば、今週のターゲットは、It
の用法ですから、前の時間にLet's talk about our favorite place.
というタイトルで、教師がモデル文で天候気候、時間、距離、仮主語のit, 仮目的語のit
を用いた文章を示し、それと類似した文となるように疑問文を板書し、宿題として答えを用意してくるように指示してあります。実際の授業では、「自分の答えを見ないでも言えるように練習の時間を与える」という口述のもとに5分ほど、宿題をしてこなかった学生でも対応できるような時間を設けます。次ぎに隣で、また、ペアを機械的に変えさせながら、4、5人と対話をさせます。そのときに、聞き手の役割を強調し、うなづいたり、合いの手を入れたり、聞き返したりして、自然に会話になるように注意します。これは、毎時間、行っていますが、実は、まだ定着していません。でも、一応の練習ができたら、自分の答えを急いでまとめて50
語程度の英文を書かせます。次ぎに、場所を説明している教科書の文章を読み、文法を手短に説明し、また、ExerciseやWorkbook
をしながら、自分の英文を書き直すときの参考になる箇所に下線を引かせます。その後、こうした点を参考にして、最低でも100
語の英文の複数のパラグラフを書くことを宿題にします。次の授業では、書いてきた英文を、パラグラフの形、動詞と主語の一致、時制、この時間でいえばIt
の用法が正しくできているかという観点で再度チェックさせ、それを教師が配布する用紙に清書して提出させます。次ぎの週までには、私がそれぞれのglobal
errors を中心に訂正して戻してやり、それを見ながら、できれば暗記して、仲間にスピーチするという流れです。ですから、2ページ構成のone
lesson の終了には2時間をかけます。急いで多くの知識を与えるよりも、定着することと使用の機会を多くすることを大切にしています。こうした授業の流れは、次第に定着しつつあるようです。

(4) テストをする内容を通知しているか。

 目標がきまり、授業活動がきまれば、期末にはどのようなテストをするかを伝達しておくことも大切です。私の場合は、
 a) 教科書の既習の例文(80語程度のもの)の7レッスンの中から一つ選んで音読テストをする。音読テストで不合格なら、筆記試験を受ける資格なし。(ただ、一度、不合格になっても、再度機会を与えるので、結局はあきらめなければ、全員合格になる)
 b) 文法説明の中の文のターゲットとなる語の穴埋め。
 c) Exercise やWorkbook の語順や選択肢の問題
 d) 与えられたテーマでの自由英作文(実際は、これまで練習したテーマをあわせれば
   できるような問題をだす)と伝えてあります。

 さて、このように書くと、万事が上手く行っているようですが、実際は決してそうではありません。授業に平気で遅れてくる学生もいれば、開き直ってペア活動に参加しないし、宿題もださない学生もいます。上に書いたことは、いわば、私の希望的な観測にしかすぎません。(ついでながら、遅刻したり、授業に参加していない学生は、他の学生が作業している間に教卓に呼びつけ、理由を聞き、今後の注意をします。個人的に注意されると、それで改善される者もいます。依然として改善していない者は、「後で後悔するだろう」と全員に警告は発しますが、それ以上の注意はしません。「勝手にしろ。でも、後がこわいぞ」というムードを漂わせておきます。)結論としては、授業の目標も教師側の意図も方法も明確になり、学生側の反応も見え始めたところで、教師の思い込みだけで授業を進めていないかをチェックすることが必要です。具体的には、上記の5点に関して、学生はどう感じているのか、教師は本当にこの形で授業を進めているのか、ポイントを絞った観察や自己観察でチェックし、また、アンケートやインタビューで生徒の意見を聞くと同時に、実際に進めている授業のレベルが、生徒の実態や要望に合致しているのか、英語力やperformance
で調べる事前調査をします。 その内容は、次回のメールで。

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6/10/2007

AR Navigator 2007 No.6 PMA

 PMAってご存知ですか?以下の説明を読んでみてください。制限時間は20秒です(笑)。

One of the few things we have complete control over is our attitude.
When faced with adversity, we can choose to focus on the negative in
the situation or the positive. A positive mental attitude, or PMA, is
something everyone can adopt with a little practice. The benefits of
a PMA are beyond comprehension, and according to many achievers, the
number one reason for their success.

A positive mental attitude is seeing the benefits, opportunities, and
good in situations rather than the setbacks, problems, and bad. More
important, it is focusing on this positive and using it to your
advantage. PMA is asking how something can be done rather than saying
it can't be done. It is the driving force behind persistence and
perseverance.

There is a belief that nothing in this world is "good" or "bad", but
rather everything is balanced and it is only our perception that makes
good and bad. Whether you believe that to be true or not, it is hard
to debate that perception and attitude have much to do with how we
view the world.

     (http://www.yeartosuccess.com/ より)

「よいよ、またこのうるさい役回りか。やってられん。」と思うのか、「このことでは、信頼されているんだ。がんばってやってみるか。」と思うのでは、違いますよね。

不安になったり、仕事に行き詰ったり、後ろ向きになりそうなときに、このような考え方があるということを思い出してみてください。あまり楽観的すぎてもいけないのでしょうが、やはり、自分自身がどのような「心もち」でいるかで、ものごとの結果も、満足度も変わってくるものです。そして、先生のもつ、ポジティブな姿勢はきっと、生徒にも伝わるはずです。

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AR Navigator 2007 No.5 佐野先生のミニ・レクチャー(2)

佐野先生のミニ・レクチャー(2)  もう、いいかい? まだだよ。

ミニレクチャー(1)では、授業はじめには、次ぎの点を確認しようと話しました。ひとつ目は、教師の授業にかける思いを語るということです。これから1年間付き合うことになる先生はどんな人なのか、大抵の生徒は興味をもっていると思います。ですから、自分の中学や高校のころの生活や夢などを語ってやることが大切です。ただ、一度、自分のことを語ったからと言って、期待しすぎてはいけません。何人かが興味を持ってくれればよいのです。そっけない顔をしていても、内心の興味をわざと隠そうとしている者もいるでしょうし、逆に、反感を抱いてしまう者もいるかもしれません。その場合は、それはそれで仕方がない、次ぎの機会に仲良くなろうという程度に軽く考えるようにします。

次に、この授業でどんな力をつけて欲しいかを具体的に話すことです。たとえば、「英語で身近な出来事が書ければ、海外の友達とメールの交換ができるよ」というようなことです。ただ、それには練習が必要で、そのために絶対に守って欲しい教室でのきまり、自分で努力してほしいことなども伝えます。また、モデルの対話例を与えてペアで活動をさせ、相手を説明する英文を書くなどの活動もします。「コミュニケーションで相互理解を深めよう。メールも会話も、となりに座っている人から始めよう」と呼びかけるのです。

ここまでが、先週のポイントでした。ただ、教師と生徒の人間関係でも、クラスのルールも、コミュニケーション活動も、一度、話したからといってすぐにできるものではありません。時間を掛けて、リサーチの基礎作りをします。その間、ごく普通に授業は進めますが、大切なのはその進め方です。教師の個性や教科の特殊性などがあるので、いろいろの形があるのは当然ですが、忘れてならない基本もあります。それは、コミュニケーションの機会のない授業、教師指導型で講義形式一辺倒の授業であってはならないということです。なぜなら、授業で最も大切なのは、生徒が学ぶ(=英語が好きになり、できるようになる)ことなのですから、生徒を無視した一方通行では目標は実現できないからです。

とにかく、こうして、自分の授業のパタンがある程度理解されたら、それが生徒の要望に合致しているか、一度、軽くチェックしてみます。授業の流れを一覧表にしてタイプした用紙を配布し、それぞれの活動の狙いを教師が話すと同時に、それぞれの活動が理解しやすいか、役立つと思うかを授業直後に10分程度の時間を割いて、選択肢を選ばせる形のアンケートで調査します。そして、用紙の最後にはスペースをとって、「この授業でどんな力をつけたいと思いますか。先生に望むことはなんですか。自由に書いてください」と自由表記のできる箇所を設けます。この場合は、「ひとりひとりの考えていることを知りたいので、アンケートには名前を書いてください」と指示します。

こうしたアンケート調査は、教師が個々の生徒の要望を理解するためのものですが、それだけではありません。「君たちの意見を聞いて、よりよい授業にしたいんだ」というメッセージを生徒に送ることにもなるのです。ここまでは、アクション・リサーチの準備の段階です。本格的なリサーチの開始は、「まーだだよ」。

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6/09/2007

AR Navigator 2007 No.4 不安あり?

皆様へ

オリエン当日に提出していただいた自己評価表の自由記述欄に記入していただいたご質問やご意見について、何回かに分けてお答えしていきたいと思います。

トップ1は、「今の多忙な中で、仕事をしながらアクション・リサーチをできるのか。」でした。他を引き離してダントツトップです。ホーム運営、校務分掌、部活動など多忙を極める中で、新しいことが増えることに対して、不安に感じているということがよく分かります。もっともなことだと思います。

Navigator冊子の4ページを読んでみてください。「アクションリサーチを行うにあたっての心構え」の中に、

「�授業にプラスして調査を行うのではなく、授業の中で授業をよりよくする調査」

であると書いています。授業とリサーチが一体化しているところが、アクションリサーチ最大の特徴であり、現職教員が取り組む実践研究として大きな意味があるのです。

少しでも分かりやすい授業にしたい、生徒に英語力をつけたいと思って、授業に様々な工夫をしています。それは、日常のことです。それを、少し計画的に、体系的にやろうということなのです。アクションリサーチをやるからと言って、何か特別な、見栄えがすることをやる必要ないのです。

「この研修のせいで、忙しさが増して、授業の取組がおろそかになってしまった。」では、まったくの本末転倒です。この研修が授業改善にとって邪魔になってしいます。それでは何も意味もありません。むしろ、研修の方を中止すべきです。

「授業について、様々な角度から考え抜く1年にする。」

これを達成することが一番大切なことです。リサーチの報告書やポートフォリオはその副産物に過ぎません。
通常よりは忙しい1年になると思います。しかし、授業と真剣に向き合う忙しさは、意味のある忙しだと思います。ぜひ、positiveに取り組んでいただきたいと思います。

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No.3 佐野先生のミニ・レクチャー(1) (2007.6.1)

皆様へ

「佐野先生のミニレクチャー」は、昨年度、佐野先生自身が大学で
取り組まれたアクション・リサーチを報告してくださったものです。ぜひ、読みたいというご要望をいただきましたので、再度配信することにしました。昨年は、1年かけてリアルタイムで配信しましたが、今年は、アクションリサーチの全貌をつかんでいただくために、早い時期に連続して配信する予定です。

教師として経験も十分にあり、そして、英語教育の研究者としての地位も確立されている佐野先生が、それでもなお、ご自身の授業をより良いものにしたい!と取り組まれている。その姿勢に感動を覚えます。

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佐野先生のミニ・レクチャー(1)

生徒に「やる気」を起こさせる「魔法の言葉」はないか?

私が大学で一般教養の英語を教えているクラスは、結構、英語嫌いの学生が多く、一番頭を悩ますのが、どうしたら多くの学生の「やる気を引き出せるか」ということです。これは私だけのことではなく、多くの教師が、生徒がもう少し「やる気」を出してさえくれれば、授業は活気づくし、成績も上がるし、人間関係もよくなるのにと思っているのではないでしょうか。実際に、この「魔法の言葉」さえ分かればあらゆる問題への扉が開くはずだと、いろいろな学者が「動機」の研究に取り組んできました。だが、残念ながら、「魔法の言葉」は存在しないというのが、今では常識になっているようです。

というと、悲観的に聞こえるかもしれますが、そうではありません。大切なことが分かってきたからです。「やる気」を出させるには、結局、その場、その時にふさわしい、生徒の実態に合わせた、教師の言葉かけや指導が必要だということです。では、今の時期には、何が必要なのでしょうか。ドルニイ(『動機づけを高める英語指導ストラテジー35』(大修館書店)を参照)の説を参考に、自分が教室で試している方法を紹介しましょう。

まず、「やればできるかも」と思わせるように努力しています。それには、まず、私自身が英語学習にどう取り組んだか話すことにしています。幸い(?)私は中学、高校と英語が大嫌いでしたから、それが必要に迫られ、大学の2年生になってから中学校の1年生の教科書から勉強し直し、結局は2年程度で英語を片言でも話せるようになったという話しをすると、かなりの生徒が興味をもってくれます。そこで、「この授業で一生懸命にやれば、1年後には3分間の会話と、100語のスピーチができるようになる」という目標を提示し、それには発音や基礎的な語彙や文法を繰り返し練習することが大切だと話します。また、クラスの人間関係も大切ですから、できるだけ名前を覚え、「君ならできる。期待している」というメセージを発し続けるようにしています。実態は期待にはほど遠い学生が多いのですが、自己表現の作文を書かせ、ポジチブなフィードバックを与えるようにします。さらに、生徒同士が知り合うことが大切ですから、フレームを与えて、ペアでの対話練習に時間をかけています。もう一つ大切にしていることは、クラスのルール作りです。授業開始前にペアで座り、教師の指示で対話の相手をローテーションで変えてゆくということです。この準備段階が済んでから、次ぎのステップに移る計画です。

もちろん、中高と大学では様子が異なることでしょう。ですが、「やる気」が大切な点は共通しているでしょう。また、どのようなアクション・リサーチのテーマを選ぶにしても、そのときどきに狙いを明確にした実践が大切だということを語りたかったのです。みなさんは、どんなアクション・リサーチに取り掛かろうとしていますか。

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No.2 事前調査&リサーチクエスチョン (2007.6.1)

皆様へ

新学期始まって、2ヶ月がたち、はや、6月。クラスの様子も把握でき、授業も軌道に乗っていることでしょう。この時期は、中間試験をやっていることろもあるのではないでしょうか。結果が楽しみです。

さて、5月が終わったところ。アクションリサーチの進み具合はどうでしょうか?

冊子Navigatorの17・18ページを、今一度開いてください。

そうそう、そうなんです。事前調査とリサーチクエスチョンは5月一杯で終わらせるようになっているのです。この段階まで、終了してない方は、少し時間をとって、まとめておきましょう。と、いうのも、次の段階である「仮説の設定」がなかなか、難しいからなんです。できるだけ、早めに現状の把握とリサーチの方向性を定めておくと、じっくり仮説の設定に取り組めます。

大切な「仕込み」の段階です。ぜひ、しっかりと教室を見つめ、1年間の方向性を定めていただきたいと思います。もちろん、いたずらに時間に追われる必要はありませんが、まず、事前調査とリサーチクエスチョン。ここまで、仕上げて、ポートフォリオに綴込みましょう。

【ここまでにやっておくことチェックリスト】

□様式1  事前課題、オリエンまでの要約と自己評価
□事前調査
1)様式2  授業観察の記録
2)生徒による授業評価
3)学力データ
□様式3  リサーチクエスチョン

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No.1 さあ、Let's begin! (2007.5.26)

受講者の皆様へ

さあ、皆さん。1年間が始まりました。

「風、きらり」 http://kazekirari.sblo.jp/
には、「達成感から、研修が終わった今は、寂しささえ感じていま
す」という昨年の受講者の方の感想が紹介されています。ごらんになっていただけたでしょうか。学校がどんどん多忙になるなか、この研修を成し遂げることは、決して楽なことではありません。しかし、注ぎ込んだエネルギーと熱意に値するだけの充実感の得られる1年間になると思います。私たちも、できるかぎりのサポートをさせていただきますのでよろしくお願いします。

まず、最初にメーリングリストの仕組みを説明しておきます。

◎メーリングリストとは、1つのメールアドレスにメールを送ることで、登録者全員に同じメールが届く仕組みです。これを活用して、オンラインで皆さんのアクションリサーチをサポートしていきます。

◎受講者の皆さんは2つのメーリングリストに登録されています。

◎1つは、受講者全員が登録されたメーリングリストです。

e_project@kochieigo.jpn.org

このメールアドレスは主に、佐野先生からのアドバイスやアクションリサーチの進め方をリアルタイムにnavigateする "Action
Research Navigator"など、主に、私どもからの情報発信に使います。もちろん、受講者全員に何か質問やお願いがある時は、このアドレスにメールを出してください。

◎もう一つは、リサーチグループごとのメーリングリストです。ここでは、メンター役の指導主事を中心に、リサーチを進めるうえでの相談やディスカッションを行います。こちらのアドレスには、気軽に様々なメールを出して、お互いに情報交換、意見交換を行ってください。

こちらのメールアドレスは、個別にお知らせします。

さあ、それでは Let's begin!