12/28/2007

Teacher Portfolioの意義


 高知県の英語教員指導力向上研修(主催 高知県教育センター、H15~19実施)の一つの柱はアクション・リサーチに実施でした。受講者は、県内の全中高教員約420名。全員が年間を通しての、所属校での実践研究に取り組みました。

 このアクション・リサーチで重要な役割を果たしたのが、Teacher Portfolioです(写真)。Teacher Portfolioとは、「ある一定期間行った教授活動に関するあらゆるものを,参加する教師自らが積極的に保管・整理することによって,教師としての自己成長の過程と結果を記録するシステム」(参照 横溝紳一郎(1999)「アクション・リサーチとティーチング・ポートフォリオ:現職教師の自己成長のために」The Language Teacher 23:12)のことで、受講者は1年間の取り組みをすべてA4版のこのファイルに綴じ込んでいきます。

綴じ込んでいくものとして、


 ①自分自身の教育哲学(教育に関する考え方)をまとめたもの
 ②担当する授業・講座の詳しい説明(授業の内容、教科書、補助教材、授業形態など)
 ③年間指導計画やシラバス

 ④学習指導案(公開授業等で配布したものなど)
 ⑤授業を録画したもの

 ⑥授業に関する観察や反省の記録やメモ
 ⑦使用した教材
 ⑧授業観察者の評価、コメント
 ⑨生徒による授業評価、授業評価システムの結果

 ⑩生徒の作品


などを例示しています。右の写真は、ポートフォリオに綴じ込まれた授業の様子を記録したフィールドノートです。

このような「教師ポートフォリオ」を作成する意義は、主に次の3つがあると考えています。

(1)より深く、継続的な内省が可能になる。
(2)自己成長の喜びを実感できる。
(3)説明責任の証拠となる。

 私たちがやってきた授業研究は、多くの場合、1時間のみの授業公開や研究授業に過ぎませんでした。その中で、同僚や指導主事の助言をもらい授業の課題を探ってきたのです。しかし、私たちはそのような方法に限界があることに気づき始めていました。授業の本質的な改善には「複雑な要因をまるごととらえ、かつ長期的な新しい研究方法」(佐野,2000)が必要であるということに。

 教員の力量形成のツールとして teacher portfolio を活用することは、まだあまり広く認知されていませんし、具体的なノウハウも確立されていません。しかし、やはり授業のように、複雑な要因がからみあったものを読み解いていくには、このような質的な分析が不可欠だと考えています。teacher portfolioの活用の普及もふくめて、その可能性を探っていくつもりです。


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