6/09/2007

No.3 佐野先生のミニ・レクチャー(1) (2007.6.1)

皆様へ

「佐野先生のミニレクチャー」は、昨年度、佐野先生自身が大学で
取り組まれたアクション・リサーチを報告してくださったものです。ぜひ、読みたいというご要望をいただきましたので、再度配信することにしました。昨年は、1年かけてリアルタイムで配信しましたが、今年は、アクションリサーチの全貌をつかんでいただくために、早い時期に連続して配信する予定です。

教師として経験も十分にあり、そして、英語教育の研究者としての地位も確立されている佐野先生が、それでもなお、ご自身の授業をより良いものにしたい!と取り組まれている。その姿勢に感動を覚えます。

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佐野先生のミニ・レクチャー(1)

生徒に「やる気」を起こさせる「魔法の言葉」はないか?

私が大学で一般教養の英語を教えているクラスは、結構、英語嫌いの学生が多く、一番頭を悩ますのが、どうしたら多くの学生の「やる気を引き出せるか」ということです。これは私だけのことではなく、多くの教師が、生徒がもう少し「やる気」を出してさえくれれば、授業は活気づくし、成績も上がるし、人間関係もよくなるのにと思っているのではないでしょうか。実際に、この「魔法の言葉」さえ分かればあらゆる問題への扉が開くはずだと、いろいろな学者が「動機」の研究に取り組んできました。だが、残念ながら、「魔法の言葉」は存在しないというのが、今では常識になっているようです。

というと、悲観的に聞こえるかもしれますが、そうではありません。大切なことが分かってきたからです。「やる気」を出させるには、結局、その場、その時にふさわしい、生徒の実態に合わせた、教師の言葉かけや指導が必要だということです。では、今の時期には、何が必要なのでしょうか。ドルニイ(『動機づけを高める英語指導ストラテジー35』(大修館書店)を参照)の説を参考に、自分が教室で試している方法を紹介しましょう。

まず、「やればできるかも」と思わせるように努力しています。それには、まず、私自身が英語学習にどう取り組んだか話すことにしています。幸い(?)私は中学、高校と英語が大嫌いでしたから、それが必要に迫られ、大学の2年生になってから中学校の1年生の教科書から勉強し直し、結局は2年程度で英語を片言でも話せるようになったという話しをすると、かなりの生徒が興味をもってくれます。そこで、「この授業で一生懸命にやれば、1年後には3分間の会話と、100語のスピーチができるようになる」という目標を提示し、それには発音や基礎的な語彙や文法を繰り返し練習することが大切だと話します。また、クラスの人間関係も大切ですから、できるだけ名前を覚え、「君ならできる。期待している」というメセージを発し続けるようにしています。実態は期待にはほど遠い学生が多いのですが、自己表現の作文を書かせ、ポジチブなフィードバックを与えるようにします。さらに、生徒同士が知り合うことが大切ですから、フレームを与えて、ペアでの対話練習に時間をかけています。もう一つ大切にしていることは、クラスのルール作りです。授業開始前にペアで座り、教師の指示で対話の相手をローテーションで変えてゆくということです。この準備段階が済んでから、次ぎのステップに移る計画です。

もちろん、中高と大学では様子が異なることでしょう。ですが、「やる気」が大切な点は共通しているでしょう。また、どのようなアクション・リサーチのテーマを選ぶにしても、そのときどきに狙いを明確にした実践が大切だということを語りたかったのです。みなさんは、どんなアクション・リサーチに取り掛かろうとしていますか。

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☆英語教員指導力向上研修メーリングリスト
"You never really lose until you quit trying."
【研修HP】http://www.kochinet.ed.jp/center/kyouka/kochieigo/index.htm
【県教委BLOG】「風、きらり」 http://kazekirari.sblo.jp/

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