6/12/2007

AR Navigator 2007 No.7 佐野先生のミニ・レクチャー(3)

佐野先生のミニ・レクチャー(3)

    これまでの実践を振り返り、事前調査にとりかかろう

 しばらくメールを出しませんでしたが、その後、授業はどうですか。私の一般教養の授業は、今年はかなり順調にすすんでいて、一応、以下のことは達成できたようです。

(1) 教師が自分の授業に対する思いを語り、体験から勉強の仕方を話す。

このことはかなり上手く行き、かなりの学生が、私が英語苦手人間からどう脱却したかという話しに興味を持ったようで、何人かが英語学習に関してのアドバイスを求めてきています。たとえば、「準2級に合格したが、2級を目指す勉強はどうすればよいか」とか、「将来、留学を考えていて、会話力を伸ばしたいのだが、どうしたらよいか」などです。前者に対しては、準2級のテストの成績を聞くとぎりぎりの合格だったので、もっと準2級の過去問題をやり、8割か9割の正解が得られるようになってから、2級の問題集をやるように忠告しました。後者に関しては、英会話学校にゆくのも悪くはないが、それ以上に、現在使用している教科書のまとまりのある例文を完全に暗記し、文法も語彙も正確に使えるように、徹底的に自己表現の練習をすることとアドバイスしています。

(2) 授業の目標に合意が得られつつあるか。

 この点に関しては、授業の最初に、「この授業では、身近な話題について、できるだけ沢山、しかも素早く書けるようにする」と目標は伝えてあります。また、2週間後に学生の授業に対する意欲や要望を尋ねるアンケートを実施し、そこで多くの学生が「話せるようになりたい」と書いたことを紹介し、「話すこと」「書くこと」を結びつけて指導するという方針を伝えました。ですから、自己紹介の文や故郷紹介の英文を書かせたら、それにポジテブなコメントを出して、興味付けをすると同時に、スピーチにして友達に発表する形をとり、聞き手も相槌や、コメントや質問をするように励ましています。

(3) 授業の進め方に定型のパタンができつつあるか。

 まず、宿題にしておいた例文を用いて、ペアを変えながら、会話をすることから始まります。たとえば、今週のターゲットは、It
の用法ですから、前の時間にLet's talk about our favorite place.
というタイトルで、教師がモデル文で天候気候、時間、距離、仮主語のit, 仮目的語のit
を用いた文章を示し、それと類似した文となるように疑問文を板書し、宿題として答えを用意してくるように指示してあります。実際の授業では、「自分の答えを見ないでも言えるように練習の時間を与える」という口述のもとに5分ほど、宿題をしてこなかった学生でも対応できるような時間を設けます。次ぎに隣で、また、ペアを機械的に変えさせながら、4、5人と対話をさせます。そのときに、聞き手の役割を強調し、うなづいたり、合いの手を入れたり、聞き返したりして、自然に会話になるように注意します。これは、毎時間、行っていますが、実は、まだ定着していません。でも、一応の練習ができたら、自分の答えを急いでまとめて50
語程度の英文を書かせます。次ぎに、場所を説明している教科書の文章を読み、文法を手短に説明し、また、ExerciseやWorkbook
をしながら、自分の英文を書き直すときの参考になる箇所に下線を引かせます。その後、こうした点を参考にして、最低でも100
語の英文の複数のパラグラフを書くことを宿題にします。次の授業では、書いてきた英文を、パラグラフの形、動詞と主語の一致、時制、この時間でいえばIt
の用法が正しくできているかという観点で再度チェックさせ、それを教師が配布する用紙に清書して提出させます。次ぎの週までには、私がそれぞれのglobal
errors を中心に訂正して戻してやり、それを見ながら、できれば暗記して、仲間にスピーチするという流れです。ですから、2ページ構成のone
lesson の終了には2時間をかけます。急いで多くの知識を与えるよりも、定着することと使用の機会を多くすることを大切にしています。こうした授業の流れは、次第に定着しつつあるようです。

(4) テストをする内容を通知しているか。

 目標がきまり、授業活動がきまれば、期末にはどのようなテストをするかを伝達しておくことも大切です。私の場合は、
 a) 教科書の既習の例文(80語程度のもの)の7レッスンの中から一つ選んで音読テストをする。音読テストで不合格なら、筆記試験を受ける資格なし。(ただ、一度、不合格になっても、再度機会を与えるので、結局はあきらめなければ、全員合格になる)
 b) 文法説明の中の文のターゲットとなる語の穴埋め。
 c) Exercise やWorkbook の語順や選択肢の問題
 d) 与えられたテーマでの自由英作文(実際は、これまで練習したテーマをあわせれば
   できるような問題をだす)と伝えてあります。

 さて、このように書くと、万事が上手く行っているようですが、実際は決してそうではありません。授業に平気で遅れてくる学生もいれば、開き直ってペア活動に参加しないし、宿題もださない学生もいます。上に書いたことは、いわば、私の希望的な観測にしかすぎません。(ついでながら、遅刻したり、授業に参加していない学生は、他の学生が作業している間に教卓に呼びつけ、理由を聞き、今後の注意をします。個人的に注意されると、それで改善される者もいます。依然として改善していない者は、「後で後悔するだろう」と全員に警告は発しますが、それ以上の注意はしません。「勝手にしろ。でも、後がこわいぞ」というムードを漂わせておきます。)結論としては、授業の目標も教師側の意図も方法も明確になり、学生側の反応も見え始めたところで、教師の思い込みだけで授業を進めていないかをチェックすることが必要です。具体的には、上記の5点に関して、学生はどう感じているのか、教師は本当にこの形で授業を進めているのか、ポイントを絞った観察や自己観察でチェックし、また、アンケートやインタビューで生徒の意見を聞くと同時に、実際に進めている授業のレベルが、生徒の実態や要望に合致しているのか、英語力やperformance
で調べる事前調査をします。 その内容は、次回のメールで。

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☆英語教員指導力向上研修メーリングリスト
"You never really lose until you quit trying."
【研修HP】http://www.kochinet.ed.jp/center/kyouka/kochieigo/index.htm

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