6/22/2007

AR Navigator 2007 No.11  佐野先生のミニレクチャー(4)

「やっぱり。やってみなきゃ分からないよ!」

 前回のメールを読まれた方は、私の一般教養の英語の授業は、順風
満帆で進んでいるなという印象を持たれたと思います。実は、私も、
「ほぼ、7割の学生は僕の授業に、おおむね満足している」と思って
いました。ただ、授業の最終到達目標を定め、リサーチ・クエスチョ
ンを設定するには、学生が現在の授業をどう受け止めているのか実態
の把握が必要です。ところが、授業が予定より遅れてしまって、アン
ケートのために時間を特別に確保することができません。そこで、授
業の一部に入れ込みました。具体的には、授業の最後の自由英作文
(「私の好きな場所」というテーマで与えておいた質問に答え、10
0語程度のまとまりのある英文を書くという課題)の用紙のうしろに、
「これまでのこの授業の目標や、進め方について、自由に感想を書き
なさい」と指示して書かせたのです。ですから、アンケートは記名で、
当然、教師側に都合のよい回答が多くなる可能性があります。以下、
その結果の概略です。

出席者数 34 名(在籍 38名)

・授業目標:
好意的な者 21名。  どちらとも 8名  否定的な者 5名

・授業の進め方
好意的な者 8 名。  要望あり  18 名  否定的な者 8名

結局は、授業の目標はいいが、進め方には注文があるということです。

○目標設定に関して好意的なコメント

*いろいろな人と会話しながら授業するので最初はとても緊張してしまい
ますが、クラスの雰囲気はとてもよいと思います。宿題と予習が多くて大
変ですが、がんばります。

*毎回、友達と英会話するので、だんだん自分の英語の発音は上手くなっ
ているかなと思う。対話すると、みんなスラスラ読める気がする。ただ、
教科書の問題の答えあわせが、少しはやいので、もう少しゆっくりとやっ
てほしい。教科書の音読は、前よりゆっくりで、何回もやっているので、
いいと思います。

*とても楽しい。英語力がついてきている気がする。でも、やる気のない
やつとこの授業  をやっても面白くない。どうにかして欲しい。ペアで
やったりする会話は、すごく身についている。また、宿題の頻度、量とも
に少々きついが、丁度よい気もする。

*毎週の授業を楽しみにしています。普段、英語を上手く話そうとすると、
笑われたりするので、恥ずかしくてできませんでした。毎日の会話の活動で、
それがなくなりました。最近は、毎日のできごとを英語で話すように心がけ
ています。

*話す機会のない人と話しができたし、コミュニケーションがとれていいと
思う。友達も増えた。また、授業では書くことだけでなく、口にすることで
ずいぶん上達できると思う。これまでの先生は、文法や書くことばかりだか
ら、先生のクラスになれてよかった。

*この授業は音読する時間が多くて、発音することが苦手な私にとってとて
も助かります。

また、席を移動することで、いろんな人と話せて楽しいです。知らない人
と話すのは緊張するし、失敗したくないので、家で少し読む予習をします。
なので予習した日はスムーズに読めます。これからも予習を続けたいです。
また、この授業は少し進み方が早いですが、そのほうが時間が短く感じる
し集中できます。

○否定的なコメント

*この授業は目標のレベルが高い気がします。私は英語がとても苦手なので、
正直いってついていけない気がします。発音もいきなり駄目と言われてしまう
ととてもついていけないと感じてしまいます。もっと初歩的なところからやっ
て欲しいと感じています。話すこともとても大事だと思います。だけど、ずっ
と話しているだけではあきてしまうので、もっとテープを聞くとか、いろいろ
なことがやりたいです。ただ、これからも頑張っていきたいと思います。

*1年の授業に比べて、レベルが高く、戸惑っている人が多いように思う。も
う少し丁寧に文法とかも説明して教えてください。もっとやさしくするか、ゆ
っくり進めるかしていただきたい。

*この授業のテンポがつかめません。英語のスピードを上げるために、展開を
早くするという理由で進めているようですが、大部分の生徒は授業を理解でき
ていないと思います。

授業の大部分が100語の英文レポートを書くという目標に向けられていま
すが、もともとその力のない生徒はどうすればよいのですか。どのように英語
のレベルアップを図ればよいのですか。自習が大切だというならば、その自習
の仕方をちゃんと説明して欲しい。結局、個々の生徒に基礎的な実力がなけれ
ば、この授業は意味がないと思います。


○結果をどう読み、どう利用するか

アンケート結果は、私が予想していたよりも厳しいものでした。ただ、上に
「否定的なコメント」を書いた学生の文を読めば分かるように、彼らは英語授
業自体を否定しているのではありません。自分の英語授業への期待や能力にそ
ぐわない授業を私が展開していることを批判しているのです。このコメントに
は、私の意図を十分理解していなかったり、また、彼らの英語授業への思い込
みから発している部分もあります。

ですから、まず、次ぎの授業には、自分の考え方が全体の中でどのような位置
にあるのかを気づかせるために、両方のコメントをいくつか紹介します。次ぎ
に、目標については支持されているのでこのまま継続する、ただ、進め方につ
いては、要望が多かった文法や音読指導をもう少し丁寧に進める、自習の仕方
について解説する、テープや教師の話す英語を聞く時間を多くするなどを約束
します。また、同時に、自分の英語力は自分で伸ばす意欲が大切で、文法ルー
ルを教えてもらって理解するのではなく、使いながら、誤りからルールを見つ
け、身に附けることが大切だと力説します。

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☆英語教員指導力向上研修メーリングリスト
"You never really lose until you quit trying."
【研修HP】http://www.kochinet.ed.jp/center/kyouka/kochieigo/index.htm

【県教委BLOG】「風、きらり」

http://kazekirari.sblo.jp/

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長崎政浩  NAGASAKI Masahiro
EMAIL masahiro@nagasaki21.com
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"You never really lose until you quit trying."

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