7/23/2007

AR Navigator 2007 No.14 佐野先生のミニ・レクチャー(7)

      「これまでの話しをまとめると。 また、こんなことができるかも。」

 通常のアクション・リサーチでは、新学期のできるだけ早い時期に生徒の実態をアンケートやテストで調べて対策をたてることになっていましたが、今回は、本格的なリサーチはつい2,3週間前に始まったばかりでした。どうしたのだろうと、疑問を感じておられる方もいるでしょう。実際のところ、これまでの実践は、リサーチというよりも、その基礎作りでした。具体的には、(1)
教師が自己紹介をかねて、授業にかける思いを語る。(2)
学生同士の交流を多くして、クラスのムード作りを図る。(3)授業の定型的なパタンになれさせる。(4)クラスのルールの確立を図るということでした。
こうしたことを通して、結局は、学生の希望も入れながら、共同の目標を設定することがねらいだったのです。また、その過程で、このグループの持つ長所や、弱い点、今後の方針なども探っていたのです。

 ですから、ここまでの動きをアクション・リサーチのフォマットで言えば、クラスの特徴、観察と省察、アンケート調査による実態把握、宿題や授業中の課題による英語力の把握に向けられていました。なぜ、このことにこれだけ時間を掛けたかというと、研修に参加した皆さんのリサーチにペースを合わせようとしたということがあります。研修では、夏休み前までに、実態の把握とリサーチ・クエスチョンの設定までもってくることになっていましたので、ヒントを提供するために、いつもの年よりは、実際の取り掛かりを遅らせたのです。通常であれば、夏休み前に仮説の第1ラウンドは終了しています。

 だが、それだけが理由ではありません。仕掛け(仮説の設定と実践)を遅らせても、クラスのムード作りにより多くの時間を掛けたらどうなるか、自分なりの興味もあったからです。これまでのミニ・レクチャーを読んでいただければ分かると思いますが、「動機を高めるには、準備段階になにが必要か」という問題をリサーチをしていたのです。いろいろな問題が未解決ですが、大筋では、狙いは達成されたようです。前期のテストが近いこともあって、出席率も8-9割、授業参加も積極的な者が出席者の7-8割程度ですから、これまでのクラスに比較すれば「気持ちが悪いくらい」に前向きです。例の厳しい批判をした学生も、肩たたき戦術(名前を思い出しておいて、授業前にひとことふたこと、誉めることばを言ってやる)が功を奏したのか、かなり積極的に授業に参加してくれています。もっとも、今週実施した音読テストは、教師の前で教科書を読まなければならないので、「にらまれてはまずい」という計算もあったことでしょう。

 ただ、書くことの力の伸びは、来週の期末テストの結果を見ないと分かりませんが、あまり大きくはないと思います。それでも、テストは予定どうり、教科書やワークブックからは言語形式に焦点化した、選択問題、並べ変え、書き直しなどだけを出し、中心は疑問文をそれを手がかりに、200語以上の英文を書くことにします。これまで、自己紹介や故郷紹介、好きな人への送りものなどのテーマを扱っているので、海外のペン・パルに帝京大学(位置、気候、季節ごとの売り、気にいっている点など)や、自分の学校生活などを紹介し、相手の誕生日の贈る送り物を説明する英文を書くことを出す予定です。話題は新しいですが、既習の表現で対応できるはずです。このテスト結果を基に、後記は疑問文で出すヒントをやめて、内容自体を学生に考えさせるようにし、疑問文でヒントを出した場合と大差のない、まとまりのある英文を書けることを目標にしてゆくつもりです。

 心配もあります。せっかくのクラスの盛り上がりが、2ケ月後の後期に持続することは考えられません。方策を考える必要を感じています。また、後期からの実践の仮説に関しても考える必要があります。これについては、前期の最終部分で、多少始めてみて効果がありそうだという感触を得ています。具体例を幾つか紹介すると、

(1) 中学校1年生の文型を疑問文にして、60個ほど選び、応対の仕方も一覧表にして手渡します。ペアを組ませて教師が読み上げる疑問文に素早く答えたほうを勝ちとして、5問で勝負をつけさせ、勝ちは勝ち組で、負けは負けでペアを作らせて、再び競わせ、何回も繰り返します。ここまでしか前期はできませんでしたが、後期はペアで質問も競わせる。その後、2年生、3年生の文型でも同じように実施することを考えています。

(2) この活動ができるようになったら、who, which, where, when, how, how far, how much,
why, etc,の疑問詞を板書するか、カードに書いておいて、教師のいう簡単な文について、上記の疑問詞を使った疑問文をできるだけ沢山、かつ素早く言えるゲームを考えています。例を挙げると、教師がI
play baseball.と基になる文を言ったら、
 Where do you play baseball? How often do you play it? With whom do
you play it?
など、ペアで素早く疑問文にできたほうが勝ちというゲームを考えています。

(3)理由や説明を考える頭の働きを活発化してもらうために、学生に言い逃れの言葉を考えさせる練習もしたいと考えています。これも最初の文を学生に考えさせると時間がとるので、教師が、たとえば、I
don't like English. という基になる文を言い、ペアの一人がそれを繰り返します。すると、すかさず、相手がWhy don't
you like English? と質問します。適当な理由を考えて、Well, I can't learn English
grammar. と答えます。すると相手は必ず、それに反論して、Oh, no. English grammar isn't
difficult at all. All you have to do is practice. というような流れを考えています。

 こうした活動は、学生が疑問文を作ることを苦手としていること、疑問文を作ることが発想を豊かにする練習になるのではないかと考えているからです。また、Why,
because の疑問文のやりとりが、やがてはdebate に発展できるのではないかとも思っています。実は
まだ、他にもいろいろアイデアはあるのですが、今日はここまで。

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☆英語教員指導力向上研修メーリングリスト
【研修HP】http://www.kochinet.ed.jp/center/kyouka/kochieigo/index.htm

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