11/03/2008

高知県秋季英語教育研究大会で考えたこと:指導の順「理屈が先か、使用が先か」



11月2日(日)は、高知県秋季英語教育研究大会(会場 高知県教育センター)だった。中高それぞれの公開授業と小泉仁(東京家政大学、元文部科学省教科書調査官)先生の講演だった。

今回の研究大会で一つ共通した課題として浮かび上がってきたことは、「指導の順序」ということだ。理屈が先か、使用が先かということである。中学校の公開授業は、「書くこと」をテーマとした意欲的な取り組みで、自己紹介文を書かせ、その校正まで行わせ、質を高める取り組みをしていた。その後、書いた英文を暗唱させて、スピーキングテストをしたとのことだった。高校の公開授業は、文法指導とオーラルコミュニケーションの統合をねらった、こちらも意欲的な取り組みで、文法を体系的に指導する授業を独自に設け、そこで扱った文法形式を、オーラルの授業の中で使わせたいというねらいのものであった。

いずれの授業も、講師の小泉先生が、講演の最後の提案してくださった考え方と対極にある。先生は、sugarについて、糖分のとりすぎという害のだけでなく、stressfulな状況を解消するために甘いものが役立つという内容の対話を、まずoral interactionで進めた。その後、それと同じテーマを扱ったパッセージを読ませるというものだった。英文の理解は、明らかにfacilitateされた。

もちろん、いずれの方法とも長所も、短所もあわせ持つ。ここで興味深いのは、多くの教員が、「ルール」なり「形」を、最初に教え込んでおかないと、英語の使用はままならず、英語も身に付かないと思っていることだろう。

中学校の授業では、生徒同士でやりとりをさせた後で、つまり、speakingの活動として自己紹介をさせた後に、最後のまとめとして書かせるという順序も考えられただろう。「暗唱」という活動は、一見易しそうに見えて、「覚えている」「覚えていない」という点が評価の基準になりがちなので、プレッシャーが大きい。むしろ、mappingをさせておいて、自由に語らせる方が、スピーキングの活動としては望ましいはずだ。最後に、スピーキングを通じて、改善された英文をまとめとして書かせる。

高校の授業でもそうだ。今回の授業では、オリジナルのスキットを書かせる活動をやっていたが、その作品を見れば、共通する文法エラーや未熟な表現が発見できたはずである。そこにこそ、意味のある文法指導が可能になるチャンスがある。単一のtarget sentenceだけで授業を組み立てることができない高校の授業でならなおさらだ。体系的に文法を指導することの意義は、否定するわけではないが、知識として文法を覚えることが目的となりがちだ。

教師というのは、personal theoryを修正するのはなかなか難しい。客観的に自分自身を見直すことは、容易ではないのだ。しかし、一度違う角度から、授業を組み立て直してみてはどうだろうか。生徒は、我々が思っている以上に、capacityをもっている。無理に教え込まなくても、自ら学ぶ、自ら伸びる力はもっている。そのような力を発揮させられた時、教師の喜びも数倍になる。生徒のより良き学びのために、自分自身の授業にもメスを入れてみませんか。

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